3章
20話
リレーが終わりグランドでは閉会式が行われようとしていた。だが、僕は保健室に向かっていた。救護所で、彼女は保健室の新内先生に連れられて保健室に向かったと係の生徒から話を聞いたからだ。目的地に着き、勢いよく扉を開ける。

「長濱!!」

「海崎君!?」

目を見開いて、驚く長濱。

「君もケガしたの?」

「いや、ケガはしてないです」

「じゃあ何しに来たの?閉会式中でしょ?」

「えーと、その…」

僕の態度を見て新内先生は何を察したような顔をした。

「そういうことね。海崎君だっけ?私はグランドに戻るから、長濱さんのことよろしくね」

新内先生は保健室を後にした。新内先生が何か誤解しているような気もしたが、まぁそれは置いておこう。

「長濱、足大丈夫か?」

「うん、でも開会式の前に海崎君にこけるなよって言われてたのに」

「冗談のつもりだったけどな」

「そうだよね」

長濱と目が合い、笑い合う。

「海崎君ありがとうね。アンカーで頑張ってくれて」

「ううん、おれはいいとこどりしただけ、他のみんな頑張ってくれたおかげだよ。でも長濱も応援ありがとうな。ちゃんと長濱の声も聞こえてた」

「そっか、よかった。海崎君が成瀬君抜いたとき思わず叫んじゃった」

「そうなんだ」

「うん」

沈黙が流れる。その沈黙を断ち切ったのは、長濱の方だった。

「あのさ海崎君…」

「どうした?」

「…私とハチマキ交換してもらえませんか?」

「え!?」

長濱からの提案には驚きを隠せなかった。長濱もハチマキのジンクスは知っているはずだからだ。

「ごめんね、急に。急にこんなこと言われても迷惑だよね」

「そんなことない。迷惑だなんて思ってないよ。ちょっと驚いただけ」

「じゃあ、改めて言うね。私とハチマキ、交換してもらえませんか?」

少しの沈黙が流れる。

「ごめん、交換はできない。」

「そっか…理由聞いてもいい?」

僕は交換できない理由を長濱にきちんと説明した。

「そうなんだね…」

「だからごめん」

「そっか…」

三度沈黙が流れる。

「私もう大丈夫だから、海崎君は先に戻ってていいよ」

「わかった…」

長濱を背に僕は教室を後にした。





■筆者メッセージ
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アゲハ ( 2019/01/21(月) 19:18 )