8話
「家に帰るまでが遠足だからな。気を付けて帰れよ!」
設楽先生の話も終わり、この日は解散となった。校門を出て、家に向かって歩いていると、後ろから頭を叩かれた。振り返るとそこには飛鳥がいた。
「なにすんだよ飛鳥」
「べつにいいじゃん。そんなことよりこれから用事ない?」
「ないけど」
「そうか、じゃあそんな暇な湊には、この飛鳥ちゃんと帰る権利を与えよう」
「はぁ?てか成瀬君は?」
「バスが渋滞に巻き込まれて、こっちに戻るのに時間かかるから先に帰っていいよってさっきLINEがきた」
「そっか」
「だから暇な湊と帰ってやる」
なぜか上から目線の飛鳥に逆らうことこともできず、一緒に帰ることになった。話の中心は、もちろん本日の遠足のことだ。
「そういえば、湊イルカショーでずぶ濡れになってたね。あれは笑った」
「うるせー。でもあんなずぶ濡れになるとは思ってなかった」
「でもよかったね」
「何が?」
「タオル貸してくれる女の子がいて」
「はぁ?」
「ねるのこと好きになった?」
ニヤニヤしながら、飛鳥は顔覗き込んでくる。
「べつにそんなんじゃないし」
「そんなこと言って、タオル貸してもらったとき満更でもなそうな顔してたくせに」
「してない!」
「あームキになった。さては図星か?」
飛鳥はこちらを指さしながらニヤニヤしながら、こちらをからかってくる。
「長濱のことをそんな風に見たことはない」
「ふ〜ん、じゃあ他にタオル貸して欲しい人でもいたの?」
飛鳥の質問の答えに戸惑う。ここで本心を言ってもいいものか。だが、ここのままではまた後悔する気がした。だから意を決して飛鳥の質問に答えることにした。
「どうしたの湊?急に黙り込んで」
「あのさ飛鳥、おれがタオルを貸して欲しかったのはさ・・・」
次の文字を発そうとしたその瞬間だった。
「あっ!!!お兄ちゃんそれに飛鳥ちゃん!」
急にした声に驚き、声のした方を見ると祐希がこちらに大きく手を振っている。そして祐希は走って駆け寄ってきて飛鳥に抱きつく。
「飛鳥ちゃ〜ん!!」
「祐希!元気だったか?」
飛鳥は祐希の頭を撫でている。
「うん!飛鳥ちゃんこそ元気だった?」
「元気だぞ!祐希に会えたしな」
飛鳥の言葉を聞き、ますます嬉しそうする祐希。
「そういえば湊、さっきなんて言おうとしたの?」
「べつに、なんでもない」
「ふーん、まぁいっか。祐希帰るぞ!」
大きな声で「はーい」と返事をする祐希。そしてこの後3人で話しながら家路についた。