2章
5話
「みんな揃ってるか?」

設楽先生がバスの前で、クラスの人数を確認している。今日は遠足の日だ。この学校では、5月にクラスの交流を深めるために、各クラスで行先を決め、日帰りの遠足に行くのだ。

人数の確認が終わり、バスに乗り込み、前から4列目の窓際の席に座った。もちろん隣は京介だ。

バスが出発するとみんな楽しそうに談笑を始めた。京介は通路を挟んで隣の小池と楽しそうに話している。最近この二人は付き合っているのではないかと思うくらい仲が良い。2人の邪魔をしては悪いと思い、イヤホンをつけ窓際を向き目をつぶった。

目をつぶるとすぐに眠りについた。眠りについてから数分が経った頃だろうか、イヤホンが耳から外された。それによって目が覚め、目を開けると何故か隣には飛鳥が座っていた。夢を見てるのではないかと思い自分の頬つねっってみると痛かったので、これが現実であることを再認識する。

「湊何やってんの?頬なんかつねって」」

「いや、べつに。てかなんで俺の隣に飛鳥がいるんだよ」

「あれみたらわかるでしょ」

飛鳥が指を指す方向を見ると、京介と小池が楽しそうに話している。飛鳥は小池の隣座っていたが、小池が京介とばかり話して暇だったので席を変わったらしい。

「そういうことだから、湊には、飛鳥ちゃんの話し相手になる権利を与えよう」

「いや、いらないです」

目をつぶり、寝る体勢に入ろうとする。すると頭を飛鳥にはたかれる。

「いたっ!」

「いいから相手しろ!幼馴染からの命令だ」

「わかりましたよ。飛鳥様の相手をさせていただきます」

「よろしい」

バスが目的地に着くまでの1時間ほど飛鳥と二人で楽しく談笑した。楽しい時間はすぐに過ぎてしまい、遠足の目的地に到着した。

いつぶりだろう、こんなに飛鳥と話をしたのは。昔はずっと一緒にいたから、会話ができることなんか当たり前だと思っていた。だけど、飛鳥が成瀬と付き合いだしてから、会話する回数がどんどん減っていった。今更気が付いた飛鳥と会話ができるだけでこんなに幸せだなんて。飛鳥とずっと一緒にいられると勘違いをしていた昔の自分をぶん殴りたくなった。





■筆者メッセージ
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アゲハ ( 2018/09/15(土) 01:21 )