9話
次の日の朝。下駄箱で靴を履き替えていると長濱に声をかけられた。
「おはよう、海崎君」
「あっおはよう、長濱。そうだ、これ昨日ありがと」
そういって小さい紙袋を長濱に渡した。
「そんな急がなくてもよかったのに。それにお菓子までわざわざ」
「いや、まじで昨日はありがとう」
「どういたしまして」
長濱と二人で教室へと向かった。
「あのさ、海崎君」
「ん?どうした?」
「今度もし良かったら、2人で遊びに行かない?」
「2人で?」
「うん・・・」
長濱を見ると少し頬赤くしている。
「いや、無理にとは言わないからね。もしよかったらなんだけどね」
少し考えてから答える。
「いいよ、どっか行こうか」
「え?本当に!?やった!!」
長濱の声が廊下に響く。廊下を歩いていた人が一斉にこちら向く。それにとても恥ずかしそうにしている長濱を見て、なんだかとても愛おしく感じた。
「じゃあとりあえず連絡先交換しよう」
「そういえば知らなかったね」
携帯の画面にQRコードを表示し、連絡先を交換した。
「じゃあまた詳しいことは、LINEで決めるか」
「そうだね!」
教室に着き、席が離れているため、小さく手を振って長濱とは分かれ、自分の席へと向かった。
「あれ〜湊君。なんで長濱さんと一緒なのかな?もしかして!?」
席に着くと、ニヤニヤしながら京介はこちらを見てくる。
「おまえ声でかいんだよ!たまたま下駄箱で会って、昨日のタオル返した流れで教室まで一緒に来ただけだよ」
「ちぇっ、なんだそんだけかよ。おもねぇーの」
そう言って京介が自分の机に突っ伏して寝始めたので、鞄から荷物を取り出し、机にしまっていると、横から視線を感じたので、そちらを向くと、飛鳥と目があった。
「飛鳥どうかした?」
「べつに…」
「なんだよ、言いたいことあるな言ってくれよ」
「昨日はあんなこと言ってたけど、やっぱ嘘だったんじゃん」
「なにが?」
「ねるのことそんな風にみてなかったんじゃないの?」
「嘘なんてついてないよ」
「あっそ」
そう言うと飛鳥も机に突っ伏して寝始めた。
『なんで飛鳥が機嫌悪くなんだよ。意味わかんねぇ』
そんなこと心の中で思っていると、チャイムが鳴り、一日が始まった。