2話
「よっ湊!おはよ!」
学校に向かって歩いていると、途中で影山 京介に声をかけられた。京介とは高1の頃同じクラスになったのをきっかけに仲良くなった。高2の現在も同じクラスだ。
「おはよう。京介」
「なんか今日いつもより元気なくねぇか?」
「そんなことないよ」
「そうか?ならべつにいんだけど」
京介と一緒に学校に向かっていると、校門の前に人だかりができていた。普通なら何事かと気になるところだが、この学校では日常茶飯事のことだ。
「あいかわらず、白石先輩の人気ってすごいのな」
「そうだね」
白石先輩とは、この学校のマドンナ的存在の白石麻衣のことだ。その美しすぎる容姿からファンクラブが高校内でできるほどの人気である。噂ではファンは他校生徒にもいるらしい。容姿だけでなく、誰にでも優しいという性格の良さも彼女の人気である理由の一つらしい。
人だかりを横目に校門をくぐり、下駄箱で上履きへと履き替え、自分のクラスである2年4組の教室へと向かった。教室の扉を開け、窓際の列の一番後ろの自分の席を目指した。ちなみに京介は一つ前の席だ。
「おはよう齋藤」
隣の席の齋藤に挨拶をしたが齋藤は一度こちらをチラッと見て、何にも言わず机に伏せて寝てしまった。すると、前の席に座っている京介が振り返り小声で話しかけてきた。
「お前齋藤さんになんかしたの?」
「いや、全然心当たりがない」
本当に心当たりがなかった。むしろ家を出てすぐに齋藤に会ったことが気まずかったが、勇気を出して挨拶をしたのに、無視された理由をこっちが聞きたいくらいだ。
そんなんことを考えながら、鞄から教科書を出し、机にしまっていると、チャイムがなり、朝のホームルームが始まった。