天皇杯予選
サッカーのない正和
オレはサッカーを捨てた。
由依との約束を破ったからだ。
それから3週間

遥香「あれ?正和君?」
正和「おう、どうした?」
遥香「サッカー辞めたの?」
正和「当たり前だろ」
遥香「由依は?サッカーしてるのが好きな由依は?」
正和「その由依との約束だよ!」
?「そういう事か」
??「正和、それが原因なん?」
正和「彩、朝暉」
?「ホンマ、ウチ辞めるなんて言った覚えないで?」
正和「!!!」

正和が驚くのも無理はない。
そこには由依がいたからだ。
彩「全部聞いたで」
朝暉「由依ちゃんはあの試合の前日に大阪に戻ってきてたんだよ」
正和「そうなのか?」

由依は頭を上下に振る

彩「先生にも言ってるで?
朝暉「先輩達も早く戻ってこいって」
遥香「しかも練習してたでしょ?」
正和「まぁね」
彩「決定やな」
朝暉「1ヵ月で東京に行くから準備しとけよ」
彩「先生は怪我って言ってるから」
由依「正和、うちは正和がサッカーしてる姿がすきやったねんで?」
彩「え?まさか前に正和が付き合ってたのって」
正和「由依だ」
彩と朝暉は驚いていた。
正和と朝暉と武太朗、彩と遥香と由依は中学でも美男美女として有名だった。
爽やかな細マッチョの正和、ゴリゴリのワイルドな朝暉、知的で高身長の武太朗。
胸の大きくスポーツ万能な彩、冷たい対応をする塩対応の遥香、はんなり和服の似合う京美人の由依。
この6人は毎日の様に告白されていた程だった。

彩「あとな、由依と正和の約束教えてくれへん?」
正和「俺は彩と朝暉、武太朗が大阪に転校した時、由依に告白した。
由依はOKしてくれて付き合ってたんだ、けど12月26日、由依はいきなり倒れた。
脳腫瘍だった。
俺は救急車で運ばれて行く由依助けられなかった。
そのまま東京 の最先端技術の大学病院に入院したんだ、その時に俺はいつも左手首に付けてるミサンガを貰って、由依が帰ってくるまで負けない、きつい時こそ笑う。
それだけを約束した。
由依は俺の笑顔が大好きって言ってくれたからな」

正和はどこか懐かしそうな顔をして話していた。

正和「ただ由依が戻って来た以上、由依がやってくれって頼んでる以上やるしか無いだろ!」

そのまま俺達は金子先生に謝罪しに行った。
もちろん怒られはしたが熱意が伝わったのか戻ることを許してもらった。
つぎの日から俺達は練習をする。
休んでた分を取り返すべく誰よりも走り、誰よりも自主練を行ってきた。
そして終業式が終わりサッカー部の壮行会が行われた。
俺達は1ヶ月の遠征に向かう。
大阪から東京迄はバスで向かう。
7時間半かけて向かう。
車内では俺達は音楽を聴きながら外をボケーと眺める。
全員爆睡している中俺は音楽を聴きながら起きている。

キャメロン「正和、東京で取材があるらしい、受けてくれるよな?」
正和「分かりました」

そこからちょくちょく休憩をはさみながら東京に向かう。
東京に着くと、FC東京のU18と45分×2本の調整トレーニングマッチを行う。
ガンバの傳で明日浦和レッズのU18とも試合が出来ることに。

FC東京との1本目は正和の2得点、朝暉の2得点を得るも相手に4失点を喫してしまい引き分け、2本目は相手が3点を奪うと正和が5得点を決めて勝利した。
この試合で正和は反省点として失点の多さがある。
武太朗が高い位置でプレーする時にロングボールを蹴られ失点のパターンが多い。
攻撃では体力9得点を上げるだけの攻撃が出来ていたのである程度は満足していた。
しかし正和の表情は曇天、由依が帰ってきたとはいえ勝ちグセの付いていた俺と朝暉にはダメージが無いわけでは無かった。

そしてつぎの日に戦う浦和レッズU18との試合は何としても勝ちたい、その気持ちが強く表情から滲み出ている。
更にこれが最後の調整となる。
これが終わると中1日で開会式、その後東京の味の素フィールド西が丘、東京スタジアム、埼玉スタジアム2002の3会場で1日で各会場9時からと1時から6時からの3試合、1日で9試合。
1回戦は2日で17試合、中1日で、2回戦も2日で16試合、3回戦からは1日で8試合、中2日で準々決勝の4試合、準決勝の2試合、中1日で決勝だ。
俺達は1回戦から沖縄県代表の沖縄学園との対戦だ。
データは得ている。
FWがシュート技術が高いが個人技は無い。
正和は気持ち的に有利な状態で足を伸ばしゆっくりストレッチを行いダッシュ等のアップをこなして試合の準備をする。
試合はこの間と同じ45分×2本を行う。
しかし相手には既にJリーガーとしてデビューしている人がいる。
正和は冷静ながらも球際を激しく攻める。
周りを見ながらロングパスやワンツー等のパスを繋ぐ。
それは最近薔薇と呼ばれている。
華麗なパスワークだが油断してると刺のようなシュートが襲ってくる。
その薔薇で攻め上がると正和を中心にサイドを替えながら上がる。
そしてロングボールを蹴ると朝暉はワンタッチで収めるとそのままシュート、得点にらならないものの相手からしたらこの攻撃は驚異だろう。
しかし終わってみれば3ー1、1ー1と1敗1分けと勝ち越せなかった。

正和は不安な気持ちを持ったまま大会に望むのだった。

VBP ( 2016/09/12(月) 23:16 )