B 黄昏
十五曲目 〜Dramatic?Drastic!〜
 肉がぶつかる音と同時にベッドが軋み、二人の乱れた呼吸が重なり合う。薄いゴムを隔ててはいるが、白石と晃汰は心も身体も一つになっていた。正常位の体位で腰を打ち付ける晃汰の背中に、白石はしっかりと腕と脚を絡めてホールドしている。ベッド脇には黒いビニール袋が雑に置かれており、中には彼が吐き出した白濁液を縛ったゴムが複数個入っていた。

「この性欲オバケ、私がしてあげなかったら他の子を襲ってたんでしょ」

 子宮をノックされる度に声が漏れてしまう白石は、晃汰の耳元で囁いた。

「そっちこそ、俺が抱いてやらなきゃイケメン俳優を誘ってたんだろうに」

 リハビリを兼ねた筋トレで腹背筋力が向上している晃汰は、余裕のある声で白石に答えた。否定の言葉をお見舞いしてやりたかったが、晃汰が速度を早めた為にもう呼吸すら白石はままならなくなった。

 目の前で喘ぐ乃木坂のエースは、この世のものとは思えないほど妖艶で、官能的に晃汰の眼に映った。乱れた前髪を汗で額に貼り付け、深いキスによって真紅の唇と口元はテカッている。彼女の中を抉るたびに胸が揺れ、結合部からはいやらしい水音が響く。それほどまでに白石は美しく、そして官能的だった。その証拠に、使用済みが増えても留まることを知らない晃汰に表れていた。

 三度目の絶頂をゴムの中に吐き出すと、晃汰は白石からやっとこ引き抜き、処理もせずそのまま彼女の胸に顔を埋めた。

「殺されるかと思った」

 晃汰は弱々しく呟いた。

「だって9年ぶりだよ?一回じゃ足りないよ、全然」

 白石は彼の頭を優しく撫でる。プレイの最中は晃汰が主導だったが、終わってしまえばやはり年齢がモノを言う。晃汰は一人でゴムを外してモノをティッシュで拭くと、パンツを履いた。白石もこの日の為に用意したランジェリー着て、再びベッドに転がる。それだけで晃汰は再び反応してしまいそうだったが、いくら若くても短時間に三発はキツいものがあった。
 両手を後頭部に置いて天井を見上げ、晃汰は大きく息を吐いた。

「それはなんのため息?」

 晃汰の二の腕に頭を乗せた白石が、彼の頬をつつく。

「いや、なんか終わっちゃったなぁってさ。もうこれで寝て起きて、朝ごはん食べたら帰るだけじゃん。で、明後日からまた仕事じゃん」

 どこか虚な晃汰の眼に、白石は共感できた。パーティーの最中は時間が過ぎるのも早い。そしてその前は、途方も無いほど待つ。すぐさま終わってしまえば、虚無感が心を支配し、再起不能にまで追い込む。そのEmptinessを埋めるには、次のパーティーを用意する他ない。

「そう言うことは言わないの。もっと鬱になっちゃうでしょ?」

 白石も同じだった。乃木坂に入ってから初めて色目を使った異性は、晃汰が初めてだった。勿論、カラダを許したのも彼が最初で最後だった。それ故に達成感と引き換えに、彼への支配欲が白石を不穏に包み込む。それでも白石は自ら課した掟を破ることはない。"卒業"をするまでは。

 Hard Playで熱くなった心身を空冷しようと、二人はバルコニーに出た。浴衣の隙間から入り込む海風は少し肌寒いが、今の彼らにとっては心地よかった。目の前には夜の海が広がり、波の音が彼らを包む。

「後悔はないんだよね?」

 前屈みで手すりに持たれた晃汰は、白石に問う。

「あるわけないでしょ」

 白石は長い髪をかき上げ、風に流した。その光景はまるで映画のワンシーンのようで、横目で見る晃汰はまたドキッとしてしまった。
 
 熱も冷めたところで、二人は室内に戻った。時刻は既にシンデレラの魔法が解けており、晃汰はベットに入った。続いて白石もベッドに上がったが、寝転ばずに正座になった。その眼は先ほどとは違う、真剣そのものだった。

「ねぇ、晃汰?」

 白石は彼を呼んだ。タイミング、雰囲気、そして改まった体勢から晃汰は、白石が何を打ち明けるのか容易に想像できた。

「卒業したら、私と付き合ってください」





■筆者メッセージ
最近、曲名をタイトルにするのが好きです。そして映像研に手を出すなも好きです。3人はもとより、原作の金森氏が好きです。
Zodiac ( 2020/04/28(火) 07:15 )