AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters











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第9章 専属
80 Storys 〜氷結〜
 白石に連れられるがまま電車を乗り継ぎ、晃汰は彼女の後を歩いた。だが、とある所で彼の足が止まった。

「あの、ここって・・・」

 駅の改札をくぐり、晃汰は見覚えのある光景に思わず歩をとめた。

「ん?なに?」

 白石は首を傾げながら、晃汰に振り向く。

「まさか、今から行くお店の名前って、『し』で始まって『い』で終わったりする?」

 恐るおそる、晃汰は彼女に問う。

「あ〜・・・そうかも」

 白石は視界の上の方を行ったり来たりしながら、必死に答えを取り繕うとする。

「俺は名探偵でもなんでもないですけど、たぶん貴方の思惑はハッキリとわかりました」

 晃汰は肩を落としながら腕を組む。

「バレたら終わるよ?なにもかも。しかも二人っきりはまずいでしょ、メンバー数人とならまだしも・・・」

「大丈夫、麻衣ちゃんに考えがあります」

 そう言って白石は、自分のスマホを取り出して晃汰に指し示した。そして彼にそこに留まるようジェスチャーをし、白石は何処かへと歩き去ってしまった。数分後、白石から晃汰にLINEが入った。そこには彼女が考えたマスコミから逃れる鉄壁の手段が書かれていた。その用意周到さとどうしても年下男子を家にあげたいという執念に、晃汰は渋々返事をしてその方法に従って彼女の部屋に上がり込んだ。

「ねぇ、ちょっと電話してきて良い?彼女に」

 部屋に入るなり、晃汰は白石に断りを入れてスマホを手にした。そしてよく使う項目から森保を指定してコールした。数コールの後に、電波越しに森保が応答した。

「どうしたの?こんな真夜中に」

 深夜だというのに、森保の声は弾んでいた。

「悪い。あのさ、実は今白石麻衣の家来てて・・・これから二人で宅飲みしようとしてるところなんだけどさ・・・」

 晃汰は罪悪感から、その後の言葉が続かなかった。

「いやいや、そんな疑ってないから」

 森保はケラケラと笑いだす。

「良いよ別に、泊まったって。あ、別に怒ってないからね?けど、抱いちゃだめだからね?抱くのは私だけだからね?」

 森保の続けざまの口撃に、晃汰は思わず笑みをこぼす。

「それだけ言ってもらえりゃ上等だ。じゃあ次会った時は、気兼ねなく抱ける訳だ。楽しみにしてるよ」

 晃汰は自分の見込んだ女の強情っぷりに感服し、電話を切った。一呼吸を置いてリビングに入ると、白石お手製のつまみとともに、CMの報酬として彼女がもらった飲みきれないほどの氷結の缶が置かれていた。

「まどかちゃんは何て?」

「いやいや、なんで俺の彼女の名前知ってるのよ」

「まちゅから聞いた、まちゅの胸で弱音吐いてるのも聞いた」

「いや、それいいって。黒歴史だから」

 晃汰は顔をしかめながら頭をかく。

「まぁいいじゃん、まどかちゃんも許してくくれたんでしょ?じゃあ飲も!」

 そう言って白石は晃汰の手を掴んで、強引に床に座らせた。

 温かいつまみと豊富なアルコールのお陰で、二人は完全にスイッチが入ってしまう。

「ぶっちゃけ、4期生がセンターってどうなのかなって思う。4期の数ヶ月が、諸先輩の数年に及ぶわけがないのにさ。俺は本当に近くから見てて、なんで選抜に選ばれないんだろうなってメンバーがゴロゴロいる」

 豪快に氷結を飲み干し、晃汰は空になった缶を握りつぶす。

「それ言ったら始まらないけど、確かにチャンスに恵まれない子がいるのは事実ね。2期生とか3期生にも良い子はたくさんいるのにね」

 白石は伸ばした脚を入念にマッサージをしながら、晃汰に答える。

「でも、俺に選抜メンバーを操作する権限もないしなぁ。だから俺は、アンダーの曲も手を抜かず作ってる。タイトル曲よりも眼を見張るカップリングを毎回毎回心がけてる。そうでもしないと、アンダーの連中に申し訳がたたなくて」

 テーブルの上で握られた晃汰の拳が、徐々に強さを増す。

「ところで麻衣ちゃん、俺そろそろ帰るよ?」

 左手首をわざとらしく見せつけながら晃汰は立ち上がろうとするも、白石に両肩を押さえつけられてあえなく断念した。

「この淫乱女め・・・」

 帰るのを諦めた晃汰の眼の前で、白石はこれ見よがしにボディクリームを満遍なく美脚に塗りたくる。

「まどかちゃんだってこういうケアはするでしょ?」

 悪びれることなく、白石は晃汰の眼を意識しながらなおも美脚を披露する。

「つか、酒に酔った年頃の男をよく易々と家に上げれるよなぁ。襲われたらどうすんの?」

 二人きりで夢の国に行って以来、タメ口で話す間柄になっていた。

「まちゅが目の前で下着になっても抱けないような子が、私を襲える訳ないじゃん」

 白石はフフンと楽しそうに鼻を鳴らした。晃汰はやれやれと調子で肩をすくめる。

 その後、白石は自身のベッドで、晃汰は白石が座っていたソファに寝転んで夜を明かした。二人に何もなかったのは、きちんと上まで留められたシャツのボタンが物語っている。二人は起きると、寝不足と飲み過ぎからくる壮絶な頭痛に顔を歪め、それぞれの出勤途中に頭痛薬を買い求めていた。

「まいやん、なんか体調悪そうやで?」

 松村が白石を気遣う。

「晃汰、お前酒臭ぇぞ」

 徳長は思いやりの欠片もない言葉を晃汰にかける。

「次はほどほどにしよう」

 と二人は猛省するものの、それを実行できないと一番わかっているのは本人達である。

■筆者メッセージ
ん〜なんか中途半端なエロ・・・?なんか森保いるから、キッチリとしたエロにもっていけないんだよなぁ
Zodiac ( 2019/07/28(日) 23:35 )