AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters











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第5章 47人目のギタリスト
48 Storys 〜ミナミ問題〜
 晃汰が属する乃木坂46には、3期生を迎えたことによる新たな問題が発生している。 それはとあるライヴ前のリハーサルの時に起こった。

  「ミナミ!! ちょっといい?」

 構成の確認をしようと、晃汰は地声で少し離れた星野みなみを呼んだ。 すると、星野の近くにいた3期生の梅澤美波も星野とともに、晃汰に向かって返事をした。

  「えっと・・・ 1期生の方のミナミ、ちょっといいかいや?」

 ルパン三世の口調を真似た晃汰は、区別をつけるかのように星野に手招きをした。 一方の梅澤に申し訳なさそうに掌を合わせた星野は、晃汰が待つブースへと歩を進めた。

  「そっか、そうだよな・・・ 星野みなみもいれば、梅澤美波もいるからなぁ。 安易にミナミって呼べないゼ」

 束の間の休憩(ブレイク・タイム)を、晃汰は同い年の相楽伊織とアイスカフェオレを啜りながら過ごす。 対する相楽は晃汰に奢ってもらったオレンジジュースを、美味しそうに味わっている。 

  「晃汰は下の名前で呼びすぎなんじゃないかな、良い意味で。 もっと『梅澤ちゃん』とかで良いと思うんだけどなぁ」

 考えを捻りだすように眉間にシワを寄せる相楽は、再びジュースのコップを口に持っていく。 晃汰も腕を組んだまま、首を傾けて唸った。

  「確かに、下の名前で呼びすぎかなって時はあるんだけど、それっていうのが俺に親近感を持って貰いたいが故だんだよね・・・ 難しいゼ」

  「じゃあ、直接本人たちに聞いちゃえば?」

 いきなりの転換に、晃汰は思わず相楽を見つめた。

  「ほら、本人たちも呼んでほしい名前とかあるかもしれないじゃん。 悩んだときは、聞くのがいちばん」

 そう言って、相楽はグイっとオレンジジュースを飲み干し、ギタリストの肩を叩いた。 同い年にこうまで言われてしまえば、実行に移すしか晃汰に残されていなかった。 相楽と別れた後に、まずは星野を訪ねた。 ちょうど彼女は控室でゆっくりしている時であり、晃汰は星野の隣にパイプ椅子を持ってきた。

  「私は別にないけど・・・ ただ、同い年だから下の名前で呼び合うのが普通かなって思ってる」

 秘密裏に写真集の撮影を行っているだけに、可愛さと色気が共存するようになってきた星野は、目の前のギタリストに今までの本音を放つ。 それを腕を組んで頷きながら、彼は星野の話に耳を傾ける。

  「確かに、ずっと『ミナミ』と『コウタ』だったから、これから変えるのもなんか不自然だよネ・・・ 同い年なのに『星野』って呼ぶのも、俺も嫌だし・・・」

 同調するように彼女に眼を合わせる晃汰は、若干強張らせ気味だった肩の力抜く。 

 とりあえず、星野に関して晃汰は、今まで通り『ミナミ』美波と呼ぶことにした。 そして、もう一方の『ミナミ』の元へと向かった。

  「私はなんでも大丈夫ですよ。 晃汰さんの好きな呼び方で・・・」

 3期生で固まってステージの端にいる梅澤を見つけ、晃汰は星野と同じ相談を持ち掛けた。 周囲には久保史緒里や山下美月がいる。 すると、梅澤が俯き、晃汰に聞こえないほどの声でつぶやく。

  「ただ、やっぱり『梅澤』だけだと、ちょっと距離があるのかぁって思ったり思わなかったり・・・」

 晃汰は梅澤の『本音』を聞き逃さなかった。 あえてその呟きに反応することはなかったが、彼は少し頭を動かして梅澤のの呼び名を考える。

  「そしたら、『梅』って呼んでいいかいや? 『梅澤』よりも緩くなったと思うけど」

 彼女の顔色を伺いながら、晃汰は提案をした。 久保と山下は納得したように首を縦に振った。 対する梅澤も、少しは考えたものの、最終的には晃汰に笑顔をもって承諾をしたのである。

  「じゃあ、本番頼むゼ、梅!!」

 3期生の円から立ち上がった晃汰は早速、熟考したニックネームを使った。 先程よりも梅澤は笑顔になり、元気よく彼に返事をした。 満足そうに親指を立てた晃汰は、シャツの裾を直しながら彼女らのもとを後にした。 その後ろ姿を梅澤は密かに尊敬の眼差しで見ており、その事に気づく者は誰一人としてなかった。

■筆者メッセージ
お久しぶりになってしまいました!少しずつ3期生も登場させていければなと思ってます!
Zodiac ( 2018/04/23(月) 21:50 )