AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters











小説トップ
第5章 47人目のギタリスト
45 Storys 〜媚薬〜
 大広間を出た二人は脇目も振らず、晃汰の部屋へと向かった。 部屋に着くや否や、森保はハイヒールを脱ぎ捨てて晃汰のベッドに飛び込んだ。 対する晃汰は、ジャケットをハンガーにかけ、ネクタイを首からほどいてワイシャツの裾を捲る。 

  「乃木坂さんの方で、なんかすごい活躍してるみたいじゃん」

 ベッドで横たわる森保は、ちょっとしたカクテルを二人分作る晃汰の背中に言う。 

  「やってることはAKBと変わらないよ。 曲も作るしライヴでギターも弾くし・・・ ただ、人数が少ない分、メンバーと接触する機会が多いぐらいなかな、違いは」

 鮮やかな赤色の中に小さな泡が上るカシスソーダを晃汰は作り、そのグラスを持って彼は森保のいるベッドに近づく。 彼氏がカクテルを持って近づいて来ることに気付いた森保は、起き上がって彼が差し出したグラスを受け取った。

  「誕生日おめでとう。 遅くなって悪いね」

 そう言って、晃汰は森保の持つグラスに自身のグラスを重ねた。 森保はにっこりと笑い、その笑顔に晃汰も安心して二人はグラスを唇にうつす。 喉を一回鳴らして二人は見つめあった。 そして、どちらからともなく唇を重ねた。 

  「もし、その中に媚薬入れてあったらどうする?」

 グラスを目の前のテーブルに置いた晃汰は、いつもは見せないような真剣な眼をして森保に訊ねた。 

  「え、いれたの・・・?」

 まさか、といった表情をする森保は、自分の持つグラスを凝視し始めた。

  「なんてね、いれる訳ないじゃん」

 悪ガキのような笑みを浮かべ、晃汰は自身のグラスに口をつける。 彼の隣に座る森保は、大きくため息を吐いて再びカシスソーダを飲む。 すると、森保は今まで飲んでいたカシスソーダを一気に飲み干し、晃汰に持たれかかった。 カクテルを零しそうになった晃汰は急いでグラスをテーブルに置き、彼女を受け入れた。

  「早酒はよくないぜ、お嬢さん」

 体重をかけてくる森保を必死に抱き留める晃汰は、自身の胸に顔を埋めるクールビューティーに忠告した。

  「知らない? 好きな人と飲むお酒は、これ以上ない媚薬なんだよ・・・」

 妖艶な眼をした森保は、晃汰の首に手を回すと勢いよく彼の唇を奪った。 そんな森保を強引に押し遠ざけ、晃汰はベストを脱ぎ捨てる。

  「言ってなかったか? 好きな人が迫ってくることが、これ以上ない興奮剤だってことをさ」

 体勢を入れ替え彼女の上に跨る形になった晃汰は、森保の広く空いたドレスの首筋にキスをする。 細長い身体をくねらせる森保を逃がすまいと、晃汰は彼女の両肩をガッチリと掴んで離さない。 

  「晃汰、来て・・・」

 頬を紅潮させた森保は、潤んだ瞳で晃汰を誘う。 それに応えるかのように、ギタリストの指は彼女の素肌を彷徨い、そして紅いルージュを撫でる。 二人にとっての永遠がいま、始まった。

Zodiac ( 2018/02/18(日) 22:47 )