AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters











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第4章 坂シリーズ
27 Storys 〜眠りにつく前に〜
 「晃汰、まさか・・・ 美彩、二本目開けたの?」

  「はい、そしてこのザマです」

 テーブルに並ぶ二つの缶と晃汰とソファに身体を委ねる衛藤を見比べ、白石はすべてを悟った。 そして、晃汰と衛藤がそういった関係になったりしたのではという疑問を、彼女は一切持たないほどに二人を信頼しているのだ。

  「美彩がつぶれたところ、初めて見たよ」
 
 今の今まで晃汰が寝ていたソファに衛藤を寝かしつけた白石が、髪をタオルで拭いながら言った。 晃汰もだいぶ落ち着いた頭を縦に振る。

  「で? 私がシャワー浴びてる間に、美彩とどんな話してたの?」

 ほとんどランジェリーに近いパジャマを纏っている白石は、乾ききっていない髪をいじりながら晃汰に訊ねる。 衛藤に引き続いて白石も誘惑するのか と、晃汰は重たい頭で必死に理性を保つ。 

  「・・・彼女とどこまでいったとかの話ですよ」

 なんの躊躇いもなしに、晃汰は白石に下ネタまがいの話を明かす。 当の白石も白石で、少しの恥じらいは見せたものの、年下男子がどういう恋愛を繰り広げているのか、興味が彼女にはあった。

  「私も昔いたよ、彼氏」

 白石もなんの躊躇いもなしに、過去の恋愛遍歴を同僚の年下ギタリストに告白する。 対する晃汰は苦笑いを浮かべるしかほかない。

  「高校は女子高だったんだけど、他校の男の子に声かけられて、1年ぐらい付き合ったのかなぁ・・・」

 当時を懐かしむように白石は回想をし始め、それに晃汰は絶妙な間で意見を入れている。 どうやら白石の初めては、高校のときに付き合っていた男性とのようで、その彼とは高校3年生に上がる前に分かれているのだとか。 当時は現在のようにスマホやSNSが未発達であったために、原始的なメールでのやり取りが中心であった。 だがそのメールアドレスも、別れと同時に消したようで、LINEの知り合い候補にものってくることはないようである。 

 今度は晃汰が白石に本当のことを打ち明けた。 グループ名や個人名は明かさなかったが、48グループのメンバーということだけは伝え、今置かれている状況に関しても、自分の立場を考慮したうえで白石に説明した。 それに対して彼女は肯定も否定もせず、ただ「彼女を泣かしちゃだめだよ」とだけ晃汰に言った。

  「こんな恋バナしたの、何年ぶりだろ・・・ 二十歳の子の恋バナについていけるんだから、まだまだ私も若いな」

 白石は上機嫌になって、衛藤が飲み残した缶チューハイに口をつける。 一口飲んだ後、彼女はテーブルの向こうの晃汰に缶を差し出す。 だが、晃汰はそれを断り、白石が残るチューハイを飲み干した。

  「間接キスしたら、彼女に怒られるので・・・ というのは半分冗談で、もう酒は当分無理です」

 苦笑いを浮かべながら晃汰は白石に詫び、白石は笑って彼を許した。
 
 時計の針がてっぺんを回ろうとする頃、晃汰と白石は寝床の話題に初めて触れた。 さっきまで晃汰が寝ていたソファは、今は衛藤が寝ているためにアウト。 残る衛藤の部屋のベッドがあるが、白石も晃汰もお互いにいろんな気を遣って使おうとしない。白石は晃汰に気を遣って彼にベッドをすすめ、晃汰は衛藤と白石に気を遣ってべ度を白石にすすめるのだ。 

  「じゃあさ、もう床で寝ようよ」

 白石のこの言葉ですべて解決となり、部屋の電気を消して二人は床に寝転んだ。 スマホのディスプレイに照らされる白石の端正な顔は、暗闇でもしっかりと晃汰は見ることができた。 

  「晃汰、明日何時に起きる?」

 そんな白石が暗闇の中の晃汰に質問する。 晃汰の翌日のスケジュールは白石らメンバー達と同じなので、同じ時間に起きるということでまとまった。 

  「晃汰、おやすみ」

 スマホを閉じ、白石はクッションを枕変わりにして寝転がり、晃汰につぶやいた。 今をときめくアイドルに暗闇でおやすみと言われて、動揺しない男がいるだろうか。 晃汰は平生を装って白石に返事をし、眠りについた。 アイドル二人と年下ギタリストの夜は、ひとつの物音もたたずに朝を迎えることとなるのであった。

■筆者メッセージ
こういう少しエロい展開、みなさん好きですよね?(笑)
Zodiac ( 2017/09/15(金) 21:26 )