AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters











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第4章 坂シリーズ
24 Storys 〜今夜は3人呑み〜
 アダルティな匂いの漂う白石と衛藤は、まだ二十歳になってまもないギタリストを隠れ家のような飲み屋へと連れて行った。 本来の狙いは晃汰を励ますことではあるが、美女二人にとっては自分たちよりも若い男子に、いろんなことを訊いてみたいというサブミッションも兼ねているのだ。

  「俺、本当に弱いんでレモンサワー一杯だけにしますね」

  「大丈夫だよ。 美彩は知らないけど私も一杯だけにするから」

 メニュー表を眺めながら、晃汰はテーブルを挟んだ向かいの白石に眼を向ける。 そんな白石は、目の前のギタリストの隣に座る乃木坂一の酒豪の顔色を窺った。

  「私は強いから泥酔しないぐらいまで飲めるよ」

 さすがは衛藤だなと、晃汰と白石は苦笑いを浮かべた。

  「ところでさ、晃汰は彼女いるんだって?」

 二杯目の生ジョッキを傾けながら、衛藤は隣の晃汰を問い詰める。 焼き鳥をつついていた彼は思わずむせた。

  「まぁ・・・ いますよ」

 自信満々に答えてしまうと、衛藤の質問攻めに拍車をかけてしまうと感じた晃汰は、あえて濁すような返答をした。 だが、結果は同じであった。

  「誰? いつから? どこで知り合ったの?」

 晃汰の顔に自身の顔を近づけながら、衛藤は彼に質問を投げつける。 だが、晃汰はいつも使っている嘘めいた若干の事実を教え、衛藤をとりあえずは納得させた。

  「ちゃんと大事にしてあげなきゃダメだよ? もし泣かせでもしたら私が許さないからね」

 酔いが回って若干黒石さんが入りつつある白石が、お代わりをしたレモンサワーをなめながら言った。 わかってますよと涼しい顔の晃汰は、白石と同じレモンサワーを飲む。
 
 開始から30分が過ぎ、場は素晴らしい盛り上がりをみせている。 だが、本当に酒に弱い晃汰は、2杯目のレモンサワーをチェイサーで飲んではいるが、かなり酔っている様子である。 

  「ちょっと晃汰、大丈夫!?」

 頬を紅くさせてニコニコ顔の年少ギタリストを心配して、衛藤は彼に声をかけた。

  「え? 大丈夫ですよ〜全然」

 明らかにチェイサーの水の方が少なくなっているのに、何故か酔いが進んでいる晃汰は、今まで彼女たちに見せたことのないような締まりのない笑顔を向ける。 やがて二杯目のレモンサワーも飲み干した晃汰は、さすがにマズいと思ってコーラを注文した。 おかげでやっと晃汰は平生を徐々に取り戻したが、日頃から抱え込んでいた感情が少しずつ彼の口から洩れていく。

  「そりゃあ、そんじゃそこらの人達よりギター巧いと思いますけど、それは趣味の範疇なんですよ。 それをひけらかすみたいに乃木坂とかAKBの名前借りて曲作って、当たり前のように売れちゃって・・・ 本当は裏方の仕事で、皆さんをサポートするのが俺の本来の仕事じゃないのかなって思う時があるんですよ・・・」

 いつも音楽やスタッフの仕事には人一倍プロ意識を持っているであろう晃汰が、裏ではそんなことを思っていたのかと、白石と衛藤は驚きを隠せない。

  「けど、可愛い人たちの後ろでギター弾く快感を覚えてしまったんんで、今更辞めるつもりもないんですけどね」

 そう言って晃汰は、残っていたコーラをグイっと飲み干した。

Zodiac ( 2017/09/10(日) 09:54 )