07
「ごめん、ちょっと遅れた・・・」
友一が戻ると、皮肉な光景が目に入った。
阿弥が、他校の生徒たちにナンパされているのだ。
「ねぇ、これから一緒に映画見に行こうよ。ここ抜け出してさ。」
「あの・・・私、人と待ち合わせしてるんです。その・・・」
「彼氏さんだろ?さっき見たよ。あんな地味なやつ、とっとと別れちまえよ。絶対いいことないって。」
阿弥が口ごもった途端、男子たちのひとりが口を挟んだ。
「あの・・・」
友一は意を決してその集団に話しかけた。
「悪いんだけど、そこの子と待ち合わせをしてて・・・どいてもらえないかな?・・・」
さっき阿弥をそそのかしていたリーダーらしき人が、友一に向かって見下したような顔と言い方で言い放った。
「あれ?噂をすれば、だね。」
ほかの人たちは失笑し、阿弥の周りを取り囲んでいる。
「あのさ、お前みたく地味なやつは、彼女なんていちゃいけないんだよ。とっとと消えな。」
本当ならいくらでもやり返してやりたかった。何発でも殴りたかった。しかし文化祭開始前、暴力を振るった生徒は文化祭期間中、一切登校ができなくなるのと言われていたので間違ってもやってはいけなかった。それがかなり屈辱だった。
「おいおい、黙り込みやがったぞ。ほら、行こうぜ。」
リーダーの人が嫌がる阿弥の手を引き、仲間を引き連れていった。
諦めそうになった時、横から、
「良くないんじゃないの、そういうの」
と声がした。見ると、友一と同じクラスで“学年一のやんちゃ坊主”の異名をもつ
野木洋祐がいた。彼は常夫の友達で、いつもつるんでいる。今回の文化祭でバンドのボーカルを担当している。当然モテるので、“リア充の王”と言われることもしばしば。
「何?なんか用?」
リーダーが近づいた瞬間、
バキッ!
鈍い音と共に、リーダーがひっくりかえった。そして、阿弥を手放し一目散に逃げた。
「え・・・お前・・・」
友一があっけにとられていると、
洋祐は
「俺のことは気にすんなって。あいつだけ見てればいいじゃん。」
と阿弥の方を指差して笑った。阿弥も深々とお礼をした。
とその時、さっきの騒動を聞きつけ先生が二、三人やってきて
洋祐を連行していった。
連れてかれる直前、友一に
「頑張れよ。応援してるぜ。」
とだけいい残していった・・・