ladies' room for SKE - 7.太田彩夏
02
「まもなく、国府宮に着きます。国府宮の次は名古屋に━━」

名古屋の一つ前の停車駅。

ここから名古屋まで、この感じだと持ちそうもない。

まだ時間もあるから、1度降りよう。

「ありがとうございました、国府宮です。お忘れ物のないよう━━」

ホームに降り立った途端

(グルルッ、グギュルルルゥゥ)

見定めたかのようにお腹の悲鳴は大きくなった。

冷や汗も出てきて本当にピンチかも……

急いでトイレに駆け込む


「バタンッ、カチャン!」
「シュルッシュルッ」
「カタタン」

流れるようにトイレに座る。

「ブッ、ブリリッ」

うわっ……

大きな音が出てしまった。

顔が真っ赤になるのを感じた。

慌てすぎてて個室に人が居るかわからなかったけど、誰もいないのを願うしかなかった。

その後は、大きな音が出ないように少しづつ用を足す。

(プッ、プリプリリ……)

ふぅ、スッキリした。

間に合ってほんとに良かった。

(カラカラカラ……)

(シュッシュッ)

ペーパーで前を拭き、そしてお尻を拭く。

お腹が痛かった分、スッキリはした。

パンティを上げて立ち上がる。
腰元に回していたスカートも元の位置に下げてっと。

「ジャアァァ」

「あれ〜、あやめろじゃん」

そう声をかけてくれたのが、同じ岐阜出身で同じチームKIIの副キャプテンの北野瑠華さん。

健康的な肌色でスタイルが良くって、私の憧れの先輩

「瑠華さん、今からですか?」

「うん、今からレッスンで栄にね。」

「私はこれから学校です。」

「そっか、でもなんで国府宮に?」

まさかトイレに駆け込んだなんて言えない……

「ちょっといろいろ……瑠華さんこそ、途中で降りてるのはどうしてですか?」

「あぁ、ちょうど美味しいモーニングのお店があってさ、今日は時間もあるからと思って」

そうなんだぁ

「それでトイレ寄ってから電車乗ろうと思ってさ。」

えっ?

「個室入ってたらすごい勢いで入ってくる音して、女子なのにものすごい音してたからビックリしちゃったよ」

サイアク……よりによって、よく知ってる人がいたなんて。

間違えても、それが私なんて言えない。

「ん?どうしたの?」

気付いてないのがせめてもの幸い

「いえ、なんでも」

「そっか、それならちょうど良いしさ、名古屋まで一緒に行こうか。」

「はい!」

本当にバレなくて良かった

そう思いながら私は瑠華さんと一緒に名古屋へと向かった。

■筆者メッセージ
トイレにある消音装置が生まれた理由として、女性がほかの女性に音を聞かれるのに躊躇いがあったからだそうです。

日本人らしい理由でもありますね
K ( 2021/02/10(水) 22:12 )