5.白井琴望
02
(……そういえば使ったことないなぁ)

当たり前だけどここに私が来ることはほとんど無かった。

だからお手洗いも使った事は1度も無い。

(ちょうどしようかなと思ってたし、最後に使ってみようかな)

そう思い、入ってみる。

電気は消えてたけど、入口にスイッチがあった。

明るくなり、個室が3つあるのが確認できた。

もちろん誰もいないから鍵もかかっていない。

1番手前の個室に入る。

(カチャン……)

鍵をかけて。

(ス、スルル)

スカートを腰まで上げて、パンティを膝まで下げる。

(カタタン)

スカートを上げたまま、便座にそのままお尻を乗せる。

(チョロッ……チョロロロシュウウウウ)

誰もいないお手洗いに私の用を足す音が響く。

マネージャーさんもここに居るなんて思わないだろうなぁ。

それにしても、私、本当にファンの人が使うトイレで用を足してる。

でも、気持ち良いなぁ。

(まさか、アイドルが使ったなんて夢にも思わないだろうなぁ)

女の子のファンの方だけになるけど、私の中では不思議な形だけど繋がりを持つことが出来た。

さすがに立って出来ないから、男の人の方では無理だったけどね。

(チョロ、チョロロロロ)

ふぅ、スッキリした。

(カラカラカラ……)

ペーパーを巻き取り。

(シュッ、シュッシュ)

右手で大切な所についた滴を拭き取る。

一度ペーパーを取り出して、お尻を少し浮かせてお尻の滴を拭き取る。

立ち上がり、パンティを着け、スカートを元に戻す。

(ジャアアアァァ、カチャン)

水を流して、個室から出る。

手を洗って、電気を消してっと。

舞台裏に戻り、マネージャーさんに連絡する。

「こっちゃん遅かったね、大丈夫?」

マネージャーさんが電話口で心配してくれた。

「大丈夫です、最後の感慨に耽ってたというか、そんな感じです!」

「そっか、駐車場で待ってるからね!」

「はい、すぐに行きます!」

そう伝え、通話を終える。

駐車場への通路に向かおうとして、ふと立ち止まる。

一度劇場のステージの方に体を反転させて。

「今までありがとうございました」

そう呟き、私は劇場を後にした。

K ( 2021/01/14(木) 19:20 )