12荒野姫楓
01
(シュウゥゥン、ガタンッ)
(え、嘘でしょ?)

私はすぐに現実を受け入れられず、そう呟いた。

私の名前は姫楓

今日は出かけた帰りで自宅のあるマンションのエレベーターに乗っていたんだけれど……

「故障の為、停止しました」

まさかまさかの故障に遭遇してしまった。

「係員に連絡してください」

そうアナウンスが流れたので、連絡ボタンを押す。

「ご迷惑をおかけしております、係員を急行させておりますので、しばらくお待ちください」

そ、そんなぁ……

私が落胆する理由、それは。

(グルル、グギュルル……)

(お腹痛いのに……)

実は帰り道の途中から腹痛に襲われていた。

きちんとお腹周りもカバーしていたつもりだったけど
冬の冷たい風が私のお腹を直撃してしまったのかもしれない。

(しばらくってどのくらいだろう……)

この狭い空間、どれだけ長くても1分はいない様なエレベーターの中で係員さんを待つ時間は途方もなく長く感じる。

その場に座り込むと。

(グギュルル、グルルゥゥ)

お腹に手を当てて温めても、悲鳴は収まらない。

(どうしよう、間に合うのかな)

元々あと少しって気持ちだったから、結構限界に近づいている。

15分くらい経ったかな。

未だに動く気配のないエレベーター

(ギュルルルルル)

お腹の悲鳴がだんだん大きくなってきて、外に出ようとする力も強くなってきた。

(どうしよう……)

このままじゃ、いざ助けてもらった時に女の子として1番見せちゃいけない光景を見せてしまう。

(なんとか、なんとかしなきゃ……)

そう思っていたら。

(あれ、そういえば椅子みたいなのがあるけど、もしかして)

エレベーターの右奥角に置いてある椅子のようなものを見つける。

これって、もしかして

その椅子のような物に付いている赤いボタンを押す

すると、上の蓋の部分が外れる音がした。

■筆者メッセージ
エレベーターが止まると本当に焦りますよね
最近は地震の時に多いと聞きます
K ( 2022/02/08(火) 18:04 )