01
(シュウゥゥン、ガタンッ)
(え、嘘でしょ?)
私はすぐに現実を受け入れられず、そう呟いた。
私の名前は姫楓
今日は出かけた帰りで自宅のあるマンションのエレベーターに乗っていたんだけれど……
「故障の為、停止しました」
まさかまさかの故障に遭遇してしまった。
「係員に連絡してください」
そうアナウンスが流れたので、連絡ボタンを押す。
「ご迷惑をおかけしております、係員を急行させておりますので、しばらくお待ちください」
そ、そんなぁ……
私が落胆する理由、それは。
(グルル、グギュルル……)
(お腹痛いのに……)
実は帰り道の途中から腹痛に襲われていた。
きちんとお腹周りもカバーしていたつもりだったけど
冬の冷たい風が私のお腹を直撃してしまったのかもしれない。
(しばらくってどのくらいだろう……)
この狭い空間、どれだけ長くても1分はいない様なエレベーターの中で係員さんを待つ時間は途方もなく長く感じる。
その場に座り込むと。
(グギュルル、グルルゥゥ)
お腹に手を当てて温めても、悲鳴は収まらない。
(どうしよう、間に合うのかな)
元々あと少しって気持ちだったから、結構限界に近づいている。
15分くらい経ったかな。
未だに動く気配のないエレベーター
(ギュルルルルル)
お腹の悲鳴がだんだん大きくなってきて、外に出ようとする力も強くなってきた。
(どうしよう……)
このままじゃ、いざ助けてもらった時に女の子として1番見せちゃいけない光景を見せてしまう。
(なんとか、なんとかしなきゃ……)
そう思っていたら。
(あれ、そういえば椅子みたいなのがあるけど、もしかして)
エレベーターの右奥角に置いてある椅子のようなものを見つける。
これって、もしかして
その椅子のような物に付いている赤いボタンを押す
すると、上の蓋の部分が外れる音がした。