02
お会計を済ませてふたたび駅に向かう。
駅に向かう途中、小さい方だけど催してきた。
コーヒーの効果、早いなぁ。
(電車乗る前に、トイレ行っとこっと。)
そう思い、改札を通って目の前にある女子トイレに入る。
1番手前の個室が空いていたので、そこに入る。
「カチャッ、ジィィィ、スルッスルルルッ」
ジーンズのボタンを外して、チャックを降ろしてパンティと一緒に膝まで下げる。
(カタタンッ)
お尻を乗せる。
(誰もいないし、このままでいっか。)
そう思い、装置や、水を流すレバーには手をかざさなかった。
(チョロッ、チョロロロロ、シュウゥゥゥゥ)
(ふぅ……)
両手を膝の近くに置き、手は顔に付けて一息つく。
誰もいない中、私の用を足す音だけが響き渡る。
(チョロロロッ、チョロッ、チョロロロ……)
(さてと。)
用を足し終わり、ペーパーに手をかけようとしたその時だった。
「バタンッ、カチャン!」
「シュルッシュルッ」
「カタタン」
隣の個室から大きな音がした。
(え、なになに?)
そう思った次の瞬間だった。
「ブッ、ブリリッ、ブジュリリリッ」
ものすごい爆音が隣の個室から聞こえてきた。
(うわっ、すごい音……よっぽど急いでたんだなぁ)
正直不快な音ではあるけど、その慌てっぷりからして音を消す余裕もなかったんだろうなぁ。
「うぅっ、お腹いったぁ……」
私と同じくらいの歳の女の子の声だった。
あれ?
どこかで聞いたことある声のような?
まぁ、気のせいかな。
ここで音を立てるのも気まずいから、気配を消して先に出てもらおう。
その後、5分もしないうちに隣の個室の人はトイレを終えて出ていった。
さて、私も。
(カラカラカラ……)
ペーパーを右手に取り、ジーンズが床につかないように膝を曲げながら立ち上がる。
ジーンズを穿いてる時は、この体制の方が拭きやすい。
お尻には伝わってなかったので、このままパンティとジーンズを上げる。
(ジャアァァァァ)
手を洗い、トイレから出てホームに降りると見覚えのある女の子が立っていた。
「あれ〜、あやめろじゃん」
私と同じSKE48で、チームまで一緒の太田彩夏ちゃん。
あやめろというニックネームで呼ばれている。
小顔で綺麗な顔立ちと、えくぼが可愛い私の後輩。
熱くなるとしどろもどろになる所はあるけど、それも含めて私は好きな後輩なの。
私が声をかけたら、直ぐに気づいてくれた。
「瑠華さん、今からですか?」
「うん、今からレッスンで栄にね。」
「私はこれから学校です。」
そっか、あやめろって大学生だった。
「そっか、でもなんで国府宮に?」
「ちょっといろいろ……瑠華さんこそ、途中で降りてるのはどうしてですか?」
私も岐阜から来てるのは、あやめろも知ってるから当然の疑問をかけてきた。
「あぁ、ちょうど美味しいモーニングのお店があってさ、今日は時間もあるからと思って」
「そうだったんですね」
彼女はそう頷く。
そうだ、あやめろだからあの話しても大丈夫よね。
「それでトイレ寄ってから電車乗ろうと思ってさ、個室入ってたらすごい勢いで入ってくる音して、女子なのにものすごい音してたからビックリしちゃったよ」
私としては、まさか違うだろうと思って冗談のつもりだったんだけど。
目の前にいる彼女は耳まで赤くして、顔を下に向けていた。
(さっきの、あやめろだったんだ)
こんな、わかりやすい反応はない。
電車の中でお腹下しちゃったのかな?
それで慌てて駆け込んだんだ。
これは悪いことしたなぁ、知らないフリしよう。
「ん?どうしたの?」
そう言うと。
「あ、いえ、なんでも……」
そう返ってきた。
そら、そうなるよね。
あれは私です!
なんて間違えても言えないわ。
「そっか、それならちょうど良いしさ、名古屋まで一緒に行こうか。」
何も知らないフリをして、そう伝えた
すると、あやめろの顔も明るくなり。
「はい!」
そう返ってきた。
「まもなく、3番線に電車が参ります━━」
ちょうど電車がやってきた。
私とあやめろが同時に乗り込む。
「ドアを閉めます━━」
そうして私たち二人は名古屋に向けて出発した。