11 北野瑠華
02
お会計を済ませてふたたび駅に向かう。

駅に向かう途中、小さい方だけど催してきた。

コーヒーの効果、早いなぁ。

(電車乗る前に、トイレ行っとこっと。)

そう思い、改札を通って目の前にある女子トイレに入る。

1番手前の個室が空いていたので、そこに入る。

「カチャッ、ジィィィ、スルッスルルルッ」

ジーンズのボタンを外して、チャックを降ろしてパンティと一緒に膝まで下げる。

(カタタンッ)

お尻を乗せる。

(誰もいないし、このままでいっか。)

そう思い、装置や、水を流すレバーには手をかざさなかった。

(チョロッ、チョロロロロ、シュウゥゥゥゥ)
(ふぅ……)

両手を膝の近くに置き、手は顔に付けて一息つく。
誰もいない中、私の用を足す音だけが響き渡る。

(チョロロロッ、チョロッ、チョロロロ……)

(さてと。)
用を足し終わり、ペーパーに手をかけようとしたその時だった。

「バタンッ、カチャン!」

「シュルッシュルッ」

「カタタン」

隣の個室から大きな音がした。

(え、なになに?)

そう思った次の瞬間だった。

「ブッ、ブリリッ、ブジュリリリッ」

ものすごい爆音が隣の個室から聞こえてきた。

(うわっ、すごい音……よっぽど急いでたんだなぁ)

正直不快な音ではあるけど、その慌てっぷりからして音を消す余裕もなかったんだろうなぁ。

「うぅっ、お腹いったぁ……」

私と同じくらいの歳の女の子の声だった。

あれ?

どこかで聞いたことある声のような?

まぁ、気のせいかな。

ここで音を立てるのも気まずいから、気配を消して先に出てもらおう。

その後、5分もしないうちに隣の個室の人はトイレを終えて出ていった。

さて、私も。

(カラカラカラ……)

ペーパーを右手に取り、ジーンズが床につかないように膝を曲げながら立ち上がる。

ジーンズを穿いてる時は、この体制の方が拭きやすい。

お尻には伝わってなかったので、このままパンティとジーンズを上げる。

(ジャアァァァァ)

手を洗い、トイレから出てホームに降りると見覚えのある女の子が立っていた。

「あれ〜、あやめろじゃん」

私と同じSKE48で、チームまで一緒の太田彩夏ちゃん。

あやめろというニックネームで呼ばれている。

小顔で綺麗な顔立ちと、えくぼが可愛い私の後輩。

熱くなるとしどろもどろになる所はあるけど、それも含めて私は好きな後輩なの。

私が声をかけたら、直ぐに気づいてくれた。

「瑠華さん、今からですか?」

「うん、今からレッスンで栄にね。」

「私はこれから学校です。」

そっか、あやめろって大学生だった。

「そっか、でもなんで国府宮に?」

「ちょっといろいろ……瑠華さんこそ、途中で降りてるのはどうしてですか?」

私も岐阜から来てるのは、あやめろも知ってるから当然の疑問をかけてきた。

「あぁ、ちょうど美味しいモーニングのお店があってさ、今日は時間もあるからと思って」

「そうだったんですね」

彼女はそう頷く。

そうだ、あやめろだからあの話しても大丈夫よね。

「それでトイレ寄ってから電車乗ろうと思ってさ、個室入ってたらすごい勢いで入ってくる音して、女子なのにものすごい音してたからビックリしちゃったよ」

私としては、まさか違うだろうと思って冗談のつもりだったんだけど。

目の前にいる彼女は耳まで赤くして、顔を下に向けていた。

(さっきの、あやめろだったんだ)

こんな、わかりやすい反応はない。

電車の中でお腹下しちゃったのかな?

それで慌てて駆け込んだんだ。

これは悪いことしたなぁ、知らないフリしよう。

「ん?どうしたの?」

そう言うと。

「あ、いえ、なんでも……」

そう返ってきた。

そら、そうなるよね。

あれは私です!

なんて間違えても言えないわ。

「そっか、それならちょうど良いしさ、名古屋まで一緒に行こうか。」

何も知らないフリをして、そう伝えた

すると、あやめろの顔も明るくなり。

「はい!」

そう返ってきた。

「まもなく、3番線に電車が参ります━━」

ちょうど電車がやってきた。

私とあやめろが同時に乗り込む。

「ドアを閉めます━━」

そうして私たち二人は名古屋に向けて出発した。

■筆者メッセージ
先日公開した太田彩夏さんのお話の逆視点、北野瑠華さんバージョンにしました

ゆったりですが気長に今後もお待ちください

もし宜しければリクエストなどもお待ちしております
K ( 2021/09/06(月) 00:15 )