02
俺は教室に入り、自分の机へとまるで空気のように人の間をスルスル抜けて向かう。
学校内でのイヤホンは禁止されているから、俺は仕方なくその騒がしい教室を目の当たりにするしかなかった。
そして自分の席に座ると、故意的に机に突っ伏した。別に周りの人に興味ない。
一緒に入ってきた白石はというと、教室に入るやいなや生徒1人ずつ
「おはよー!元気ー?○○ちゃんおはよー!髪巻いたんだね、可愛い。あ、おはよー…」
っとこの調子。白石のこんな振る舞いもあってか、いつでも白石の周りには人が集まる。
明るいというのはそんなにいいものだろうか。俺には分からない。
そんな白石と対象に俺はというと、誰一人とも挨拶など交わさない。仲良くなりたいとかも思わないし、メリットが見い出せない。
クラスメイトは俺のことを冷酷な目で見る。対して白石には、温かく優しい目で見る。
まあ当然と言えば当然。俺から避けてるのだから。
そう考えながら、安らかにやってきた眠気に身を委ねようとした。
しかし
「鳴海くん!」
白石は俺の席のところまで、わざわざ自分の席から声をかけながら来た。
「…なに?ちょうど寝るとこなんだけど。」
「あと20分もすれば担任来るんだから我慢しなよ。」
「その20分を睡眠に使うの。」
「話そうよ。暇だし。あっそうだ、昨日出てた英語の課題した?あれ少し分からな…」
「眠いからまた今度。」
どうせ英語の課題を教えてくれだのそういうことだろう。白石は前から頭がいい方ではないし、どちらかというと悪い部類に入る。
それより、眠気に勝ててない。
「えー!教えてもらおうと思ったのに。私指名されて答えれなかったら鳴海くんのせいだからね!」
「はいはい。」
そういうと白石はまたムスッとした顔で自分の席に帰っていった。
「朝から夫婦喧嘩かよ。幸大。」
「…うるせー。颯也。そろそろその夫婦って言うのやめろ。」
俺に話しかけてくるやつなんて白石と、今話しかけてきた高橋颯也しかいない。
颯也もまた、俺が小学生の時から一緒だ。クラスは離れることもあったが、2人でいる時間は極めて多かった。
もっと上の高校を目指せたはずの颯也は、俺と一緒の高校に進むために勉強に全力を注がなかった。その代わりに、バスケではレギュラーになったり、持久走は1位だったり。
こんなやつが、なんで俺とつるんでるのか分からないレベルで俺と颯也は次元がまるで違った。
「そんなに冷たくやってると白石もかわいそうだろ。」
「勝手に邪魔してきたのはあいつだろ。」
颯也は白石のことが小学生の頃から好きだったらしい。最初はそれ目的で俺と絡んでたというのもあるかもしれないと、最近になって感じ始めた。
結局HRまで眠りにつけないまま、颯也と喋り込むハメになってしまった。