第一章
01

今日もお気に入りの曲を、イヤホンを両耳につけてコードをぷらぷら揺らしながら聴いている。

この時間が、俺の中で一番好きだ。

周りの雑音が聞こえない。足音も、人の声も、車のエンジン音も、風の音ですら消していく。

雑音ではないと他の人は言うかもしれないけど、俺にとっては雑そのもの。不必要でならない。


学校に登校してる時はいつもこうしている。

特にうるさいのは、キャーキャーギャーギャー言って朝からハイテンションな同じ高校の生徒たちだ。
なんで朝なのに、そこまで喋りこみながら登校出来るんだろ。

イヤホン一つで俺とその会話の間に防音の壁が出来る。こっちの方が楽でいい。



ポンッ

急に俺の耳からイヤホンが外れた。それと同時に一瞬何も聞こえなくなった後、まわりの騒がしい生徒たちの声が聞こえた。

「おはよう!鳴海くん!」

耳元でそのハイテンションな声が響く。俺の一番苦手なタイプのやつが、どうして幼馴染みなのか分からない。

「返せよ。白石。」

白石麻衣。
家が隣で、親同士がずいぶんと意気投合して仲良くなってしまったせいか、前は毎日のように遊ばされた。
小学生の時から同じように進学して、一番近いからと選んだ高校の受験校ですらかぶってしまうという不運。

耳を塞いでしまうほどうるさいその喋りは、前々から耳障りがしている。腐れ縁とばかりか会うことが多いうえに、クラスも同じになってしまった。

「その前にまず挨拶でしょ?礼儀礼儀。ほら、さんハイ!」

指揮者のように手振りをする。

「…バカにしてんのか。」

こういうのは無視。

「もー、つれないなー。こんなの朝から耳につけてるからでしょ。音漏れしてるし。」

そう言って白石はムスッとした顔で、イヤホンを両手で汚いものを扱うかように持った。

「俺の勝手だろ。早く行けよ。」

イヤホンをサッと取り返し、あー!っと言い口を開ける白石を置いて先を急いだ。

ついてくるかのように白石も小走りで追いついてきた。

「せめて挨拶くらいしてよ〜。」

ガバッと腕をつかんで上目遣いで見つめてくる。
こういう行為だけは、俺はいくら白石からされてきていても慣れない。その度に照れてしまい、うまくかわせなくなる。

「…おはよう。」

仕方なく挨拶を返した。別に前から一緒にいるんだからいいだろ。

「うん!おはよう!」

腕から手を離して、敬礼のポーズをして笑顔で2度目の挨拶をしてきた。

その後も何度かイヤホンをつけようとしては「ダーメ!」と言ってとられ続けた。

明日はもう少し早めに出よう。

■筆者メッセージ
どうでしょうか。他の作者さんの書き方を参考に書いてみました。感想随時お待ちしております。
pieces ( 2016/06/07(火) 17:58 )