Prolog
3
 二学期も中頃になると、夏休みデビューした奴も落ち着きだしたり、逆に弾けてみたり、夏の恋が終わって次の恋を探す奴が出てきたりと、人間模様は色々と面白くなる。

 俺はと言うと、喧嘩騒ぎ以来の不良デビュー説も『やっぱ普通じゃん』と薄れていき、色恋沙汰があるわけでもなく、地味で波風の立たない生活に少し物足りなさも感じつつ、でもそれが心地良かったりという毎日を送れていた。

 進学校じゃないし、校内行事がわりと多めなうちの高校。

 伝統的に校内行事には本気で取り組む空気感があって、梅雨前にあった体育祭も異様に盛り上がってた。

 特に名物と言われる騎馬戦は毎年数名は病院送りが出るという恐ろしい競技で、今年も一人骨折者が出ていた。

 それでも学校側がプログラムから削除しないのは、地元のOBたちがそれを楽しみにしていたから。OBの市会議員たちが腕組みしながら見物していれば、学校側だって簡単に中止できないらしい。さすが田舎だな。



 二学期も後半になると、今度は文化祭の準備で盛り上がってくる。

 その盛り上がりも、帰宅部かつ委員会活動にも参加してない俺にはあまり関係なく、素通りできるはずだった。

 そういう中に入っていけないのは寂しく思う。だからといって自分から入り込もうとする積極性も無かった。


 だから『麻雀しねー?』なんてヤンキーの誘いを受けたり断ったりという生ぬるい日常に埋没していたし、休日は相変わらずバイトをしてたから、平日くらいダラダラしたい、という矛盾したことばかり考えていた。

 というか帰宅部の学生の平日なんて、だいたいそんなもんだと思う。





 そんな事も言ってられなくなってしまったのは、いよいよ本格的に文化祭の準備が始まろうとしていた頃。

 うちの高校は、クラスから一人、文化祭の実行委員とやらを選出し、生徒会に差し出すのが決まりになっていた。クラス委員二人のうちの一人も同時に差し出され、生徒会執行部の手足となり馬車馬が如く働かされる。

 文化系の部員は部活にかかりきりで実行側に回るなんて不可能。体育会系だって、この時期は何かしら大会があったり、文化祭に独自の企画を持ち込んだりで忙しい。

 生徒会だって部活持ちが多いから、どうしても手薄になる。

 そこを帰宅部で埋めようというわけだ。

 なんとなく嫌な予感はしていたけど、見事的中。

 担任の『どうせ放課後とか暇だろ』と言う鶴の一声で、俺は文化祭実行委員と言う不名誉極まりない称号を拝命することになった。


 暇は認めるけどさ、やるやらないは別の話だよな。




■筆者メッセージ
冬、夏、春の物語と来て、秋の物語です。文化祭シーズンですもんね、きっと。


タイトルは……ま、(仮)でしょうかね?既視感がある?気のせいですよ。きっと。
希乃咲穏仙 ( 2021/10/24(日) 01:20 )