天命
「ククク……お前は……森田ひかるだな? そうなんだよなぁ!」
「ひっ……!」
青ざめる原口。
当たりだ。
俺が最後に林の中で殺してバラバラにした少女。
さっきのデジャヴに登場した少女。
彼女もまた転生し、性転換し、あの金髪女から報復の使命を受けたのだ。
そして、俺を見つけ鈍器で殴り殺害し、報復を成し遂げた。
そりゃ、何度も何度も脳髄が周りに巻き散るまで殴り続けるわな。
これ以上無い程の恨みがあるしな。
鈍器で一発殴って気が済む訳が無い。
あの女物のスニーカーだって、考えてみれば今時の女が好みそうなデザインだったな。
大人であんな派手なスニーカーを履いている奴なんてそうそういない。
最初は捜査撹乱の為にあんなスニーカーを選んだのかと思ったが、なんて事は無い。ただの少女の趣味だった。
「……どうして……なんで……私は……」
全身をガタガタと震わせている原口。
俺は太ももに固定してあるナイフのベルトをそっと外す。
「また、同じ光景になっちまったな。ひかるちゃぁぁん」
運命とは皮肉な物だ。
せっかく報復に成功し第二の人生を手に入れたのに。
こいつの天命はまた同じ犯人である俺に報復され、その短い転生人生を終える。
これは永遠に続く殺し合いなのか?
俺が原口浩平を殺せば、またこいつはあの空間に飛ばされ、金髪女から選択肢を与えられるのだろうか?
そこまでは分らない。
今までに俺が殺して来た十数人の少女のうち、転生したのは森田ひかるだけ。
もしかしたら他の少女達もあの空間に呼び出されたのだろうか?
そして、森田ひかる以外は全員潔く成仏する事を選択したのだろうか?
そんな事は俺の知ったこっちゃない。
仮にこいつがまた転生し、俺を殺すのなら受けて立ってやるさ。
そして、俺もまた転生し、必ず見つけ出し殺す。
何度も。
何度でもだ。
もう転生するのが嫌になるほどに残酷な殺し方で報復し続けてやるさ。
ナイフを振り上げる。
ふと視線の先に田村保乃の姿が見えた気がした。
俺はその姿を視界に捉える事はせず。
振り上げた腕を原口浩平の首筋に、深く深く突き立てた。