反射
こめかみを押さえながら一歩ずつ前へと足を運ぶ。
それでもまだ頭痛は収まらない。
脳内では少女が細かくパーツにばらされて行く。
前方には蹲っている原口の姿が見える。
まるで現実と夢とが混ざってしまったかのよう。
俺が重い足取りで原口に近付くと、足音に気付いたのだろうか、原口が後ろを振り向き立ち上がった。
「はぁ……。あ、璃子さん。すみません。わざわざ来てくれたんですね」
近くにいるはずなのに声が随分遠くから聞こえる気がする。
耳鳴りもする。
俺は原口の手前まで来れたは良いが、そのまま前のめりに倒れてしまう。
「え、ちょ、璃子さん」
咄嗟に原口が俺の体を支えた。
俺は原口の腕の中でデジャヴと戦っている。
犯人はまだ少女を一つ、また一つとパーツに小分けしていく。
原口が俺の名前を呼んでいる気がするが、耳には届かない。
少女は左腕、右腕、左足、右足、下半身、右胸、左胸までパーツを分けられていた。
そして、犯人がノコギリを首に当てたその時。
見開いたまま絶命している少女の真っ黒な瞳に犯人の姿が映った。
は?
俺はその意味を理解出来ずにいた。
……何故だ?
少女の瞳に映った犯人は恍惚の笑みを浮かべながら少女の首にあてたノコギリを何度も何度も引く。
その度に血飛沫が舞うも、犯人は気にする素振りすら見せない。
それどころか血飛沫が舞う度に笑みがこぼれている様にも見える。
……何故なんだ?
理解が追い付かない。
何故なら少女の瞳に映っていた犯人の顔。
それは黒崎健吾そのものだった。