計画 2
一時間ほど保乃の部屋で計画を立てた俺達は、未だ静かな2階に安堵し、計画の実行に動いた。
まず、保乃が里奈の遺体を発見し原口、廣田を呼び出す。
そして3人でそのまま俺の部屋、そして1階の守屋の部屋に向かい全員を呼び出す。
当然、隆司と信太郎の部屋にも声を掛けるが返事は無い。
多分ここで廣田辺りが鍵を開けろと騒ぎ出すのだろう。一度保乃の部屋に全員で向かい、マスターキーで部屋を開ける。
もちろん、二人とも部屋にはいない。
事前に俺の部屋のベッドで死んでいる隆司は信太郎の遺体を隠した様に、何処かに隠す手筈だ。
どこに隠すのかを尋ねても保乃は軽く笑うだけ。
方法にさほど興味の無い俺は遺体の件は保乃に任せる事にしている。
そんな状況で廣田、原口、守屋が出す答えは決まっている。
『國枝隆司と津田信太郎が松田里奈を殺した』
そして、森や理佐も関係性の高い二人が殺したと廣田が騒ぎ立てるだろう。
何故なら、あいつ等のアリバイはお互いがお互いのアリバイを立証していたに過ぎないのだから。
共犯と分れば馬鹿なあいつ等でもアリバイの意味が無い事くらい気付くだろう。
そうなれば奴らの意識は一気に、姿を隠した隆司と信太郎に向く事になる。
つまりは隙だらけの状態。
その中で3分の1の確率での報復を、自分のタイミングで行えば良いだけ。
もはやあの5名の中に犯人が居なかった時点で、俺にはこいつらの中の誰が犯人なのかは全く分らない。
もうこの中にはいないのでは無いか、とすら考えている程だ。
しかし、あと3日は迎えの船が到着しない。
どちらにせよ、この洋館に呼ばれてしまった時点で死ぬ運命にあったのだと、自分の不運を呪って、死ねばいい。
部屋を出た保乃は俺の部屋に向かい隆司の遺体を何処かに隠した。
俺はその間、もう一度3人の中で最も犯人に近い人物はいないか頭をひねっていたが、頭一つ廣田が有力であるという以外は検討を付ける事も出来なかった。
信太郎の自白から廣田の所属している政党に裏金が回っていたのは事実と分ったが、それはまだ廣田が所属する前の話だ。
そもそも、その話が真実だと出馬前に廣田が知っていたとしたら、そんな疑惑の政党から自分の人生をかけて出馬しようという人間が立候補するだろうか。
しかもスキャンダルが報道されてされてからは、金は信太郎の個人通帳に振り込まれていた。
廣田の手元には全く金の流れがない。
あいつには何もメリットなど存在しない、それよりもデメリットの方が遥かに多い気がする。
そう考えれば、頭一つ分抜いているどころか頭一つ分可能性が低いと考えるべきかも知れない。
そんな事を考えていると、隆司の遺体を隠し終えた保乃が部屋に戻って来た。
「準備は……宜しいのかしら?」
俺の質問に無言で頷く保乃。
「……では……行きましょうか」
そして俺達は、計画通りに事を進めることにした。