序―2
「ん?」



 俺は目を覚まし、頭に手をやる。



……血が出ていない?




『……目覚めましたか。ご気分は如何でしょうか?』



 目の前には長い金髪の女が微笑んでいた。



「……ここは……?」



 辺りを見回す。


 だだっ広く真っ白な空間。


 何も無い空間。



『……貴方は、ある人物に殺害されました。貴方には選択肢が御座います』



 俺の質問を無視し、目の前の金髪女はマニュアル通りとでも言わんばかりの言葉を俺に向ける。



「……殺された、のか」



そりゃあそうだ。

あれだけボコボコに鈍器で殴られたんだ。


で、選択肢?



『このまま潔く成仏するか。それとも第二の人生を歩むか』



 金髪女は両手を広げ、それぞれの掌の上には淡い光を放った球体が出現する。



「……第二の人生が……選べるのか?」



 俺は殺された。


 しかし、第二の人生が選べるのであれば当然それを選ぶだろう。



『……分りました。貴方は第二の人生を選ぶのですね?』



 金髪女は右手の朱く輝く球体を俺に差し出す。



 俺はその球体を受け取る。



『……しかし貴方には試練が御座います』



 金髪女の説明は続く。



『……これから貴方は転生致します。……しかし、転生出来る時間は30日だけで御座います』



「は……? たった30日だけ?」



 俺は肩を落とす。


 一ヶ月限定の『第二の人生』。



そんなものに何か意味があるのだろうか?


お別れを出来なかった人間に対し挨拶でもしろと?



『……その30日の間に、貴方は探すのです。……貴方を殺害した者を……』



 渡された朱い球体の輝きが更に増す。



「……犯人を……捜す……?」



一ヶ月の犯人捜し……。


だが、探して、どうする?



 俺の疑問に対し金髪女が答える。



『……そしてその者に対し『報復』するのです……。そしてそれが時間内に達成されれば―――』



 光が俺の身体を包んで行く。



 俺はその光の眩しさで目を瞑る。





『―――貴方は、第二の人生を天寿を全うするまでの期間分、手に入れる事が出来るでしょう―――』







希乃咲穏仙 ( 2021/05/02(日) 23:02 )