七話
「彰くんって、本当に料理上手だよねぇ」


 ビーフシチューを食べる史帆が、ただでさえ大きな目をさらに大きく開いて、感心したように言う。


「でしょー? 特にこのビーフシチューは絶品なのよ。ね、彰?」


 私はまるで自分のことの様に笑って自慢した。


「うーん」


 彰は少し照れたように笑いながら、史帆のグラスにビールを注ぐ。


「あ、ありがと。ね、おいしく作る秘訣でもあるの?」


 ビールを一口飲み史帆が尋ねた。


「肉にね、ちょっとした秘密があるんだ。別に高い肉を使ってるわけじゃないんだけどね」


 史帆の言葉に彰が照れくさそうに笑う。


「何それ? 私にも教えてよ」


 私がそう言ってテーブルに身を乗り出す。


「久美にも話してなかった?」

「うん。聞いてない」

「そっか、じゃあ秘密」

「なによー、ケチー」

 
 私は笑って、わざと彰のグラスにビールを並々に注いだ。


「おい、あふれるだろっ」


 彰は慌ててグラスに口を付けた。


「あ、彰くん、こぼれてるこぼれてる!」


 史帆はさりげなくタオルを手に取り、彰の服を拭いている。


「ったく、この酔っ払いが」


 彰の声に史帆が笑っている。私も酒がまわってきたこともあり、彰を見ながら大声で笑った。そして心の中で彰を試した自分を軽蔑した。



ビーフシチューの秘密は前にも聞いたよ、彰





鶉親方 ( 2020/01/30(木) 23:46 )