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ミクも言っていたが真子はとても人気だ。同じファン仲間であろうグループを見つけ真子は握っていた手を解き、ここで待っているように言った。小走りでそのグループに向かっていく。
輪になって話している男性に真子が声をかけると、グループの人間達は一気に士気が上がったように見えた。まるで真子がアイドルのようだ。きっとアイドル目当てと言いながら真子目当ての人間も居るのではないか?実際真子のツイッターのフォロワーは300人を超えていた。
自分だって手の届かないアイドルを好きになるより、ファン仲間の女子高生を狙うだろう。これからは真子の周辺も管理して守ってあげなければ。
「あ、あの」
「はい?」
後ろから声をかけられ、祐樹は振り向いた。そこには2人の男性が立っていた。
「あの、ま、真子ちゃんと、どういう関係なんですか」
「今、手を繋いでましたよね」
おそらくミクのファン、もしや真子のファンかもしれない。後ろをつけられていたのか?
「はぁ......えーと」
どう説明すれば良いのだろうか。教師と生徒の関係を言ってもそれはそれで如何わしい。だからと言って恋人と説明したら大きな火種になりそうな気がした。何しろこの男性2人は自分の生き写しのようだ。
「どうしたの? あっ、こんにちは!」
困っていると真子が戻ってきていた。2人の男性を見つけると真子は笑顔で挨拶をする。そのあとも『久しぶりですね!』と会話を交わしているところを見るとやはりミクのファンであり真子の知り合いなのだろう。
「あ、この人?」
真子は2人の視線が祐樹に向かっていることに気づいた。
「えーとこの人は親戚のお兄ちゃん。AGBの握手会に行ってみたいっていうから連れてきたの」
真子は機転を利かせた。真子自身も祐樹が教師であること、そして恋人であることは口外してはいけない気がしていた。その説明に納得したのか、それとも真子がそう言うならそうなのだろうと思ったのか2人の男性は真子に別れの挨拶をすると去っていった。
「はぁ、悪い人達じゃないんだけどさ、モテるって大変だよね。先生」
両手を腰に据え、真子はため息をついた。祐樹はミクが『真子ちゃんって人気だからね』と言う言葉を思い出す。
「まるで真子がアイドルみたいだね」
「そんないいもんじゃないよ? 私男に興味ないから尚更。握手会来るとさ、2人きりでご飯行こうとか偶に誘われるんだ。勿論断ってるよ? 多分狙われてるのかなって思うから」
正直関係を断ちたい人間も存在していた。女子高生の自分に平気で関係を求めてくる。マジ女での友人の繋がりとファンとの繋がりはまるで違う。周りの関係性を大事にさせなければと、そういう男にはやんわりとしか断りを入れられなかった。それがストレスになっている。
「もう彼氏いますって言っちゃえば? そうすれば真子に言い寄る人も減るんじゃない」
「そうかなぁ。敵増えて握手会行けなくなりそうだけど」
「その時は僕が一緒に行くよ」
「えー頼りなーい」
二枚目なことを言ったつもりが真子にはウケなかった。むしろ不満そうな顔を浮かべ首をかしげてしまう。