08
夏の蒸し暑さは通り過ぎ、過ごし易い季節に差し掛かって来た。真子とデートに行く今日は青空が広がり気持ち良い天気だ。バスを使い握手会場まで向かう。その道中真子はずっとAGBについて熱く語っていた。とても楽しそうでひまわりが咲いたような笑顔はこちらまで気分を明るくさせる。
目的地周辺まで着きバスを降りると、おそらくファンであろう人間が大勢同じ方向へ歩いていた。歩き始めようとすると、真子がさっと手を繋いできた。突然のことに驚き真子を眺めた。
「ん? 先生手を繋ぐくらいへでもないでしょ?」
「そうでもないよ。未だにドキってする」
「はっ、絶対嘘だね。どの口が言ってんの」
「本当だって。説明できないけど女の子ってさ1人1人感触が違うんだよね」
「へーそうなんだ」
真子は不思議そうな顔をする。
「真子の手の感触も初めてだから新しい感触でびっくりしたんだ」
「ふーん。良いね。比べられるくらい女の子にモテて」
いくら弁明しても真子からは皮肉が止まらなかった。羨ましいというよりは揶揄うのが楽しいのだろう。女子に揶揄われるのは男としても楽しい。
歩きだしてからも真子の口は動き続け、アイドルが本当に好きなんだと感じる。
「で、先生は誰推しなの?」
「そうだなぁ。推しっていう程じゃないけどリーオンとか好きかな」
「うわぁ......確かに好きそう。ロリ顏で巨乳とか先生好きそうだわ......」
真子が眉間にシワを寄せ、気持ち悪がる仕草をした。リーオンこと向井理緒は幼顔だが胸が大きくグラビア雑誌も多数こなしていた。そのギャップが話題となりグループ内でもそれなりの人気を誇っている。
「ウオノメとかジセダイもそんな感じじゃん、おっぱい大きくて可愛くてさ。何? それがセフレの条件なの?」
「違うって。好きになってくれたのが偶々そういう子だっただけだよ。それに朱里はセフレじゃなくて彼女」
「やりまくってんだから変わりないでしょ。いやぁ先生のこと変態だと思ってたけどここまで変態だと逆に引くわ」
「そんな変態をデートに誘ったのはどこの誰でしょうねぇ」
揶揄い口調に祐樹も加わる。生徒達もそんな変態を好んでいる。
「言っとくけど私に手ェ出したら警察に突き出すからねっ」
ぎゅっと手を繋ぎ、真子は笑顔を見せた。そのまま腕を組み身体を密着させる。言ってることとやってることが違う。真子も心の内には変態性が備わってるのだろうか。そう思うとこれからの展開が楽しくなってくる祐樹だった