07
「行くわけねーじゃん」
南那は明後日の方向を向き、真子と全く同じ反応を見せた。殆ど予想していたことだがここまでそっくりだと笑えてくる。
祐樹は笑いを堪えきれず、クスクスと肩を揺らした。
「な、なんだよ」
「いや、真子と反応が全く同じでさ。面白くて」
恥ずかしくなったのか南那は周りをキョロキョロ見た。南那を見つけたのは別の教室だった。祐樹を見た途端、これも真子と同じくバツが悪い顔をしていた。
「もし、必要なら僕も一緒に行きます」
「......いいよ。迷惑かけたくないし」
「いいんですよ迷惑かけても。僕はその為に居るんですし」
祐樹としては厄介ごとに巻き込まれても2人を仲良くさせたかった。本音を言えずに真子も南那も苦しんでいる。
「真子は私をほっといたんだもん......それで弟の悪口言っちゃったし。もうおしまい」
「そんなことないよ。南那がカッとなって言っちゃったことも分かってるよ」
「......でもね。2人で行ったとしても多分余計なこと言っちゃうと思うんだ。それで怒らせちゃってケンカになると思う。先生の気持ちはありがたいよ。とっても嬉しい。だからこそ先生をがっかりさせたくないんだ」
南那が初めて笑顔を見せてくれた。思春期の微妙な心内を南那なりに話してくれた。それはきっと自分も経験したことがあるのだろう。だが大人になるにつれ忘れていた。
「分かった。じゃあ代わりに僕が行ってもいい?」
「うん。良いよ。真子は先生のこと好きだし。あ、でもね」
張り詰めたような緊張が解けたのか南那は柔らかな笑みを浮かべている。
「真子って頑固だから気をつけてね」
またもや同じようなことを言われて祐樹も笑顔になった。やっぱり2人はちゃんと繋がっているのだ
「うん。気をつけるよ」
祐樹は手を伸ばし南那の頭を撫でた。