09
開演の時間になり会場にアナウンスが流れた。祐樹は、2人分としても多そうなポップコーンと自分の飲み物が登ったお盆を持ち、李奈は特大のコーラを両手で持った。おそらく1リットル以上は入っているだろう。小柄な李奈が持つと尚更カップが大きく見える。
「うひゃードキドキする」
「そうですね。僕も映画館って不思議とテンションが上がりますよ」
チケットを渡し、半券に切り取られるとそのまま中へと進んだ。自分達と同じく中へ入っていくのは親子連ればかりだった。カップルで居る自分達が目立っている気がして祐樹は周りをキョロキョロと眺める。李奈はそんなことは微塵も気にしてないようだ。
指定された劇場に入る。斜めに上がっていく床を歩き音が周りの壁に吸い込まれるような感覚を覚えると目の前に広がる大きなスクリーンを見上げた。
「なぁ、席どの辺だ? ウチ数数えるの苦手なんだよ」
「あぁチケット見せてください」
李奈はチケットを祐樹の目線の前に差し出した。李奈と連番で席を取ったから祐樹の席は李奈の隣になる。
「えーと、真ん中より上の方かなぁ。僕についてきて」
「分かった」
すると李奈は祐樹の服の裾を掴んだ。祐樹の手が塞がってる為、手を繋げなかった。その横を走った子供が通り抜けて行く。
祐樹は席の番号を確かめながら上へと登っていき、自分たちの席がある列を見つける。既に何人かの観客が座っていた折、狭い通路を気をつけながら進んだ。
李奈の席を見つけると最初に李奈を座らせお盆を渡し、祐樹は自分のチケット確認した。どうやら自分は李奈の左隣のようだ。荷物を足元に置くと席に座った。
「席探すときいつもどうしてるんですか?」
「どっか行くときはいつもおたべがそばに居てるんだ」
「なるほど。横山さんが」
「偶にマジックも連れて行ってくれるけどな」
「あはは。李奈さんまるでそこら辺に居る小学生みたいですね」
「あ、言っちゃいけないこと言いやがったな! 殴らせろ!」
意外と気にしているのか。目が鋭くなり拳を構えた李奈をなだめる。すると場内が暗くなり大きなスクリーンに広告映像が流れ始めた