06
ぶすっとした顔で祐樹を見上げるも、李奈はさながらアイドルのようだった。マジ女にはヤンキーだが顔立ちが整った生徒が多い。こうやってまじまじと見つめるとそれを実感できる。
「でも可愛いですよ?」
「ん〜でもなんか顔がむずむずするんだよ」
そう言いながら李奈は頬をむにっと動かす。化粧の経験が無い祐樹はその感覚が想像出来なかった。
「もう行きましょっか」
「うん。よろしく」
李奈は手を差し出した。それを取ると手の指を絡め恋人繋ぎをした。李奈と外を歩くときは必ず手を繋ぐ。決まり事にしか過ぎないが手を繋ぐ行為はやはりドキドキするものだ。李奈の手は朱里のように小さかった。
歩き始めた祐樹だが李奈がくっつくようにして歩くためふらふらと足取りがままならない。
「もうちょっと離れて歩きません?」
「なんか恥ずかしいんだよ......足もスースーするし」
「恥ずかしい?」
普段身だしなみを整えるということをしない為、きっちり服装から化粧全てを施された状態が周りから浮いてるように感じて落ち着かなかった。それにスカートは履いてもスパッツを中にいつも履いているが、今回はゆりあに阻止された。ゆりあ曰く『デートはスパッツ禁止!』らしい。
「今の李奈さんはとても可愛いんですから。見せつけてやる!くらいの気持ちで挑んでみたら?」
「別に見せつけたくないぞ。斉藤に見られるだけで充分だ」
「それはありがたいですね。今の李奈さんは僕だけのものってことですか」
「うん。お前なら全然いいぞ。1番の友達だし」
どうやら教師としてではなく、友人として見られているようだ。でもある意味その方が個人的には嬉しい。
李奈は無意識に祐樹の腕を組み、見上げる。
「でも、ラッパッパの皆さんの方が1番の友達では?」
「あーあいつらは家族みたいなもんだから。おたべはお母さんで、マジックとヨガはお姉ちゃん。にひひ」
素敵な関係だなと祐樹は思った。普段から『馬鹿だ子供だ』と言っててもゆりあと杏奈は李奈を可愛がっていた。杏奈から李奈の世話を頼まれた時、杏奈が『李奈がこんなに心を許してる男は初めてだから行ってあげてほしい』そう言われた。年齢は変わらないものの末っ子の様な存在の李奈をいつも気にかけているのだ。
笑顔を見せた李奈の頭を優しく撫でた。すると李奈は『ん?』と不思議そうな顔をした