05
「ねぇ、祐樹ってスカートの方が好きかな?」
「そうだな。ただ長めのスカートにしよう。こいつが慣れてない」
「それもそっか」
パジャマを脱ぎ下着姿の李奈が不機嫌そうに姿見を眺める後ろでゆりあと杏奈は勝手に相談している。足元を見ると様々な色の服が所狭しと並べられていた。ゆりあはこれを1つずつ李奈に当てては戻していく。
「なぁー、これ全部やるのか?」
「当たり前じゃん。今日はあんたの人生初デートなんだから」
「デートって、映画見に行くだけだぞ」
「祐樹と一緒でしょ? それはデートってこと」
確かに李奈は異性と付き合ったこともなければ一緒に出歩いたこともなかった。祐樹と映画を見に行くと決まった時も、デートという感覚より友達と遊びにいくという気持ちだった。
「えーそうかなー」
「だからさ、少しでも可愛くしてあげようと思ったの。あと化粧もするからね」
「うえっ! またなんか塗りたくるのかよ!」
化粧の仕方など知らない李奈。度々、ゆりあの化粧の実験台にされていたが顔に絵を描かれてるようで気分が良くなかった。
「お前も19歳になるんだろ? 化粧くらいして外に出ろ。悪いことじゃない」
「だいじょうぶ。そんなにはしないから。はいこれ着て」
フィッティングが終わり、ゆりあは不貞腐れた李奈にスカートとその前に決めたシャツやトップスを渡した。渋々1つずづ着ていきベルトを締める。李奈は顔を上げ姿見を眺める。そこには新しい自分が映っているような気がした。映ってるのは自分の筈なのに思わずじっと見つめる。
「おー似合うじゃん」
ゆりあは小さく拍手した。杏奈も頷いている。時間が残り少ないことに気づいたゆりあは李奈をベットに座らせ化粧が始まった
「あんたは可愛いんだから。祐樹に可愛がってもらいなよ」
同級生ではあるが李奈は2人にとって妹の様な存在だった。同い年なのに比べものにならない程馬鹿で子供っぽいが、それがラッパッパの癒しだった。そんな彼女がマジ女を卒業することになった時は心底心配していた。だからこそ信用している祐樹に仕事先を探してもらっていた。彼のおかげで仕事先が見つかったが迷惑をかけてないか心配になり、ラッパッパは週1〜2で亜粗美菜に昼飯という名の様子見に行っていた。そんな心配をよそに李奈は精力的に働いている。その度に胸が熱くなる思いだった。
李奈には幸せになってほしい。そんな願いを込めてゆりあは、嫌嫌言いながらも目を瞑っている李奈の顔にメイクを始めた。