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マジすか学園は元々偏差値皆無の学校であった為に、勉強が嫌いと言う生徒や勉強が苦手な生徒が集まる。しかし朱里達の世代から真面目に卒業する生徒や大学に進学した生徒も増えたせいか前の様な極端に学力が低い、学ぶ意欲が低い生徒はかなり減っていた。
それでもクラスに一定数は存在するがそれは他の学校と割合的には変わらないだろうと思った。そしてそう言う生徒には他の生徒より手を掛ける機会が多くなる。つまり自然に注ぐ愛情も多くなると言うわけだ。
基本それは教師としての愛情が絶対なのだが自分はその理性はとっくに無い。今までも献身的に手を掛けていた生徒は愛情を求め始めそれ以上の関係となった。
今目の前にいる少女も贔屓している生徒の1人だ。
「もう全然分かんない」
「それは陽世のやる気がないだけでしょ」
シャープペンをくるくると回しながら不貞腐れると左手で頬杖をついた。陽世は授業中も同じことをよくしている。きっと癖なのだろう。
「分かんないものは分かんないもん」
「 じゃあ一生帰れないよ? それで良いの?」
「えー」
ぶすっと口を尖らすと陽世は体勢を直し問題を解き始める。
自分のクラスの生徒である高校一年生の山口陽世はとても勉強が苦手だった。授業中もぼーっとして偶に居眠りもしているほどだ。それでは点を取れるはずもなく、テスト後は補修を受けるのが常だった。
「ゆっくり考えれば分かる問題だからさ。大丈夫」
「うん」
ゆっくりではあるが、動いていくシャープペン。途中で悩んで止まりながらも1問ずつ陽世は答えていった。
「じゃあ次はこっちの問題ね」
「まだやるの? もう後でいいじゃん」
「そんなこと言ったらいつまでもやらないでしょ?」
「え〜......だって私だけ宿題もあるんだよ」
「それとこれとは別」
陽世は机に突っ伏し、足をバタバタさせる。陽世は他の教師の言うことは聞かない。なので担当教科以外の教科も教えなければならなかった。
「宿題ちゃんとやるからさ。もう帰らせてよ」
「ダメ。後ちょっとだから頑張ろ」
「先生私のこと贔屓にしてるって言ってたじゃん」
「そうね。陽世には頭良くなってほしいから一番勉強させてあげる」
「やーだーよー」
毎回補修をする度、陽世は駄々をこねてくる。ただその姿を見せてくれることすら自分だけにらしい。
他の教師の言葉はほぼ無視していると言う。
「もし陽世が留年しそうになったら何とかしてあげるから、それまでは自分の力で頑張ってごらん」
「......うん」
それから陽世は黙々と問題を解き始める。途中教えたりもしたが分からないながらも取り組んでいた。
その間は陽世の横顔をじっと見つめる。小柄な身体の陽世はもっちりとした頬を持っていた。毎回見つめているが陽世は気にしていない。
「陽世って綺麗な髪してるよね」
「そう?」
陽世は長い髪に指を絡める仕草をした。キラキラと輝いて見える。陽世の解答を直す為に持っていたボールペンを長い髪にくぐらせた。
「触って良い?」
「何、先生髪フェチなの」
「まぁ多少」
「......別に良いけど」
髪がと言うより、女性の身体の全てが好きだ。どこもかしこも性への対象に感じる。長い髪をなぞる様に撫でるとサラサラとした感触が伝わった。こうやって陽世の身体に触れるのは初めてだ。陽世は恥ずかしいのかじっとしていた。