01
寝室のドアを開ける。するとそこには絵に描いたような美少女が雑誌を読みながらベットの上に座っていた。学校帰りらしく、制服のままで待っていてくれていたみたいだ。
「あ、おにいちゃん遅〜い」
彼女は頬をプクッと膨らませ子供のような表情を浮かべた。学校では大人びた生徒として学校中の男子の人気らしいが、この無邪気な少女の様な仕草が男どもの心を掴んでいるのだろう。
「ごめんごめん。でも絵梨花だって学校から帰って来たばかりでしょ?」
「そうだけどお姉ちゃんが、夕方にはおにいちゃんが帰って来るっていうから張り切って1時間前にはここで待ってたのに!」
「流石に早いって。これでも絵梨花に会いたくって待ち遠しかったんだから」
そう言いながら絵梨花の隣に座った。彼女からは花の様な優しい香りがふわっと漂っていた。その香りは一瞬で絵梨花の世界に引き込まれる気がした。
「いーや! 私の方が絶対待ち遠しかったね」
ふふんっと 見上げる様な仕草をし絵梨花は得意げだった。こんな可愛いしかも女子高生が親戚というのはまるでおとぎ話に近いなと思った。
絵梨花は玲奈の妹で有数のお金持ちの高校『乃木坂高校』に通う17歳だ。学校では特待生として扱われており、経済的にあまり余裕がない加藤家だが学費を全額免除にされている。成績優秀、生徒会副会長も務め、しかもピアノコンクールで 数々の賞を受賞している。
数多の才能を持ちながらも気取らず、誰にでも優しく接する姿に学校中の生徒が絵梨花に好感を持っていた。テレビで学校が紹介された際、生徒代表としてインタビューも受けており「乃木坂高校に凄い美人が居る!」とSNSで話題になった程だ。
荒れていた玲奈とは真逆と言われがちだが、絵梨花は玲奈の事が大好きで将来的には姉である玲奈を養いたいという。玲奈が好きなものは自分も好き。玲奈の元には毎日絵梨花からのLINEが来ていた。
絵梨花に会うのは今日で2回目になる。初めて会ったときから絵梨花はこんな感じだった。「お義兄ちゃん」と呼ばれ、最初から隣でずっと甘えていて帰る頃には、腕の中に収まっていた。
「というか本当に俺で良いの?」
絵梨花は分かり切ってる質問をされたかの様に素っ頓狂な表情をする。
「うん。なんで?」
「いや絵梨花は絶対俺よりマシな人間と幸せな人生送れると思うからさ」
「えーそうかな? お姉ちゃんの旦那なんだから1番マシな人間でしょ?」
何故か絵梨花は玲奈の事になると思考が止まるらしい。この姉妹は玲奈の選ぶものが正義だと言う。この状況を作ったのも玲奈だった。
「お姉ちゃんが選んだ人とエッチをするって昔から決めてたんだから。まぁ恋愛禁止を決めたのはお姉ちゃんだったけどね」
本当にそれで良いのだろうか? ただ絵梨花はそれを何の疑問にも思っていない様だった。決して嫌々従っているわけではなく心から自分の事を好きと感じているらしい。
じっと絵梨花を見つめると、絵梨花は『ん?』と首を傾げた。更に見つめていると顔の横にピースを作り『えへへ』とにっこり笑った。