01 1話のみ
「とりゃっ! えい!」
部屋の天井に吊るしたクッションを勢い良く殴ると一旦大きな弧を描き、自分目掛けて戻って来た。それに狙いを済ましタイミングを合わせ拳をかざす。
「うわっ!」
しかしそのタイミングは外れてしまい自分の顔に吊るしたクッションが直撃した。その勢いで床に倒れ尻餅をついた。打ち付けた尻をさすり、また立ち上がると今度は相手がそこにいると想定し拳を振った。
「行くぞ! シュッ、シュッ!」
漫画で見る分には風を切るような音が鳴っているが自分の腕が細いせいか音が出ない。なので自分の口で効果音を出すことに決めた。
どうやら相手は自分の攻撃に手も足も出ないようであっという間に倒した。
「ふふふ。私の力を思い知ったか」
腕組みをし相手を見下すようにふんぞり返る。シミュレーションはバッチリだ。こんなトレーニングを30分程してるせいか身体が疲れ、ベットに座った。しかし休んでいる間も戦いのことを考えなければ。
そう思い、本棚に手を伸ばして大好きなヤンキー漫画を手に取った。学ランを着たいかつい顔をした男がヤンキー学校の天下を取る話で自分は女性だがこの漫画が大好きだ。
自分の夢はこの主人公のように天下を取ること。だからこそマジすか女学園に進学を決めた。だが自分は喧嘩をしたことがない。人を叩いたことも無い。だが勝てる気がする。マジ女に入って半年が過ぎたがついにマジ女の最強組織ラッパッパの本拠地である音楽室を見つけた。ここの人間を全員倒せば天下は自分のもの。
クラスにはガラの悪いヤンキーが何人か居るものの、あんなのは敵じゃない。強い奴にしか興味がないのだ。
だからクラスでは自分の存在を隠していたのだ。
ここまでは何もかも自分の計画通り。そう思うとニヤニヤが止まらなかった。ゴロンとベットに寝転がると隣にある大きなウサギのぬいぐるみを抱きしめた。このぬいぐるみは自分が小学生の頃から大事にしてきた。寝るときは一緒じゃないと眠れなくなる。
「うさちゃん。有以ね、明日天下取ってくるからね! うさちゃんも応援しててね」
表情が変わらないぬいぐるみだが有以には笑顔に見えた。
マジすか女学園1年生小栗有以。それが彼女の名前だ