04
身体を揺らされている。でもそれは夢を見ているからと思った。しばらく自分に何が起きているか分からなかったが、揺らされているのは現実だと言うことに気づいた。
「さと、怜音、起きて」
「ん......」
心地良い睡眠から目覚めたくなかったが身体に力を入れてゆっくりと起き上がった。眠い目を擦り、声のする方を見ると見覚えのある人物が自分の身体に触れていた。
「先生......」
「どうしました? どこか具合悪いの?」
「ううん、さと眠くて保健室で寝てたんです......」
自分の身体を揺らしていたのは教師である祐樹だった。祐樹は安心した様な顔で見ている。もしかして心配されていたのかもしれないと怜音は思った。
「涼羽から『さとちゃんが授業の時間を過ぎても来ない』って連絡が来たから、代わりに探してたんです」
「あーそうだったんですね。ごめんなさい、昨日も遅くまで勉強しちゃって。えへへ」
「そっか。さとは頑張り屋さんだけど、程々にしなよ」
祐樹は怜音の頭を数回撫でる。怜音は寝起きでぼーっとしてる感覚が心地良かった。祐樹は自分のことをいつでも褒めてくれる。テストで良い点を取っただけで頭を撫でてくれる。勿論自分だけにでは無いがとても嬉しかった。
「あれ、今って何分だろう?」
怜音は隣に放り出していたスマホを拾う。画面を点け、そこに大きく記された時計の数字を見る。するとそこにはあり得ない数字が表示されていた。
「うそ......!」
「どうしたの?」
「さと、50分も寝てたの......!」
予定の20分は大幅に過ぎていた。そして授業を遅刻扱いになる開始30分のリミットも超えてしまっていたのだ。一気に眠気が覚め、血の気まで引いた。授業を欠席してしまった
「もしかして授業をサボるつもりじゃなかったの?」
「はい.....休み時間の間だけ寝ようと思ってて......どうしよう、ママに怒られちゃう」
「さとのママは厳しいもんね......そっか、もっと早く探してれば良かった」
マジ女は少しの遅刻なら許してくれて、出席扱いになるが欠席は流石に見逃してくれない。今まで体調不良以外で授業を休んだことがなかった。もしこれを母親が知ったらどうなるのだろう。もしかしたら家から追い出されるかもしれない。
「あ、あの先生......」
「何?」
「......出席簿書き換えてくれませんか?」