01
いつものように騒がしい教室。2年生に進級した時はこれがうるさくて勉強に集中出来なかったものの、今では全く気にならなくなった。朝から騒がしい原因はいつだってあの子だ。
「ねー! さとちゃん、宿題手伝ってよー!」
教科書やノートを広げていた机に突然桃色のノートが置かれた。それに驚き顔を上げると教室が騒がしい原因である萌夏が困り顔で立っていた。
「また? 宿題は自分でやらなくちゃダメだよ」
「だーって分からないんだもん」
「分からなくても自分でやるの」
すると萌夏の頬がぷーっと膨らんでいく。
「さとちゃん勉強すちじゃん! 萌ちゃんの宿題もやらせてあげる!」
「別に好きじゃないよ......それにさとじゃなくても」
「さとちゃんしかいないもん。ずんも教えてくれないし〜」
確かに萌夏の友達も同じ気苦労を味わってる為に萌夏を手伝おうとはしないだろう。なぜなら萌夏は宿題を解らないから出来ないのではなくやってこないだけなのだから。これがほぼ毎日だ。
「はぁ、しょうがないなぁ......」
断っても萌夏はしつこくお願いをしてくるだろう。それに萌夏には人見知りだった自分を友達グループに入れてくれた恩もある。
「わーい! さとちゃんありがと! 後でタピオカ奢ってあげるね!」
萌夏は隣の席に座り右手でシャープペンを握りしめる。机に置いたスマホの画面には今流行りのスマホゲームが映っていた。萌夏には集中力が無い。きっと宿題を教えてもまた話半分なのだろう。寝不足から来る倦怠感も相まって溜息が漏れ出た。