15
乱れきった制服を直し、脱ぎかけのパンツに片足を通した。ティッシュで膣の中から流れ出る精子を拭き取ったもののまだ中に残っているような気がした。
「雨、止みませんね」
ふと顔を上げると、先ほどまで狼のような目をしていた男は誰からも好かれる教師へと姿が戻っていた。窓から黒い雲をじっと見つめている。
「止むと思ったんやけどな」
「僕もです。タクシー呼びましょうか? もちろんお金は僕が出しますから」
「そこまでせんでええよ、もうちょっとここに居りたいし」
処女喪失の余韻はとても心地よかった。浮かんでいるわけではないのにフワフワしたような浮遊感がある。この2人だけの空間から出たくない。むしろ雨に止んでほしくなかった。
そんな空気を察してくれたのか祐樹は自分の方を見つめると隣に来てくれた。
「万が一出来ても責任はちゃんと取りますからね」
「当たり前やろ? まぁバカモノは妊娠せんかったし大丈夫やない? バカモノはあんたの子供欲しかったみたいやけどな」
「杏奈には愛想を尽かされると思いましたよ。由依さんにもぶん殴られるかと」
「あんたがどこの馬の骨か分からんやつやったら半殺しやったけど、バカモノもあんたのこと好きやったし、変態教師ってのも承知の上やからね。なんとなく想像付いてたんよ」
あの時のこと思い出しククっと揶揄うように笑う。祐樹は罰が悪そうに頭を掻いた。
『おたべ、サイトウに中出しされたぞ! ウチ子供出来るかも!』
祐樹の心配をよそに李奈は笑顔で報告に来ていた。そしてそれを聞いた瞬間、近くに居た杏奈の眉間に物凄いシワが寄っていたのは今でも鮮明に覚えている。
「うちもセフレということになるんかな?」
「由依さんがそれで良いなら、そうなるんじゃないですかね」
「そっか。なら、もっかいせえへん?」
「......もう一回ですか?」
自分自身から見えるはずのないフェロモンが出ているような気がした。祐樹に体を密着させ股間に触れる。
「雨も止まへんし、それにさっきも言ったけどうちの身体を好きに出来るのは今だけなんやで」
男を誘惑する行為は初めてだった。それも自分の身体を使って。それなのにまるで何人もの男を手玉に取った経験があるかの如く、祐樹をすんなりと誘い込むことが出来た。これは女に生まれつき備わっている能力だと思った。
祐樹の目はギラギラと鋭くなり変態の目へと変わっていく。この先許嫁との結婚が自分を待ち受けているがそれを惜しんでいるのは祐樹ではなく自分ではないだろうか?
もっと早く祐樹と出会っていればこの時間が長く続いたかもしれないのに……