07
いつも見ている限り玲奈はいわゆるギャルのようで、ゆりあに近い部分があると思っていた。だから行為に及んでも玲奈はあっけらかんとしていると予測していた。だがその予想が外れ玲奈は罪悪感に押しつぶされ苦しんでいる。
『お前は女をその気にさせた責任をとる必要がある』抱きしめた杏奈に言われた言葉を思い出す。それでも祐樹は玲奈を抱くことを躊躇っていた。その躊躇いが玲奈を傷付け泣かせてしまった。
「前から朱里に言われてたけどもっと早く玲奈さんのこと気にしてればよかったなぁ」
「え? どういう意味?」
「あのね。このデートのこともセックスすることも、勿論玲奈さんが僕を好きらしいってことも朱里知ってるんだ。というか朱里に頼まれたって言った方がいいかな」
玲奈は身体を起こし、鼓動が速くなった胸を押さえた。そう簡単に信じれる話ではないだろう。浮気を進める恋人など聞いたことがない。それも女性が。
「う、嘘でしょ? からかってるの」
「からかってないよ。朱里から聞いたの、玲奈がずっと先生のこと見てるよって。多分好きなんじゃないかなって。それから玲奈さんからデートの誘いが来て朱里と相談したんだ」
「でも朱里は何も言ってこなかったよ? 朱里は甘えたがりだから私と2人きりなんて言ったら絶対嫉妬するはずなのに」
「それは僕も思った。だから玲奈さんは僕に直接言ってくれたんだろうなって。でも朱里は恋人だからもちろん相談するよ。黙っててごめんね」
「うん......」
祐樹の言葉に玲奈は俯いた。玲奈は身体に寒さを感じ、再び祐樹の懐に潜った。祐樹は玲奈の頭を撫でる。
「じゃあ、尚更なんでOKしてくれたの?」
「人をほっとけない優しいとこが好きだから、だってさ。玲奈のことほっといたら先生のこと嫌いになるからって。あと朱里達を一番に愛してくれてるからって」
玲奈は『朱里達』という言葉に違和感を覚えた。そういえば祐樹にはもう1人恋人が居たことを思い出す。
「その、ヨガさんの方は?」
祐樹の恋人になってから杏奈は物腰が柔らかくなり、前みたいに冷酷なところは少なくなったものの、それでもあの目で見つめられると蛇に睨まれたカエルのように足がすくんでしまう。機嫌を損ねたら今でも長い足からの蹴りが飛んできそうだ。祐樹の手前もう暴力は無いと思ってもラッパッパの面々には緊張してしまう。
「ちゃんとOKしてくれたよ、安心して。杏奈にも言われたの『その気にさせたならちゃんと責任取りなさい』って」
祐樹の言葉に玲奈は胸を撫で下ろした。それと同時に温かいものが胸の中に溢れているようなそんな感覚を覚えた。
「でも本当にセフレで良いの? 俺の一番は玲奈さんじゃないよ? 辛くない?」
「ううん。セフレでも満たされてるよ。私は朱里みたいに甘えん坊じゃないし。先生と繋がってるだけで嬉しいよ」
緊張が解けたように、玲奈の表情が柔らかくなり笑みがこぼれた。
「私が落ち込んでたりしたら受け入れてくれるだけで嬉しい。あと先生がしたくなった時はいつでもエッチしてあげるからね」
「そうやってビッチみたいな事言わないの。そんな軽い女じゃないでしょ?」
「色んな男とやってたらビッチだけど、先生としかしたくないからビッチじゃないよ。むしろ純愛だから」
にひひ、と玲奈が目を細めて笑顔を見せる。自分の不貞が何故か受け入れられている。むしろそれを求めている彼女達が存在する。祐樹はこんな都合の良い展開がまた続くのが楽しみになっていた