03
「冗談、だよな?」
「わざわざそんな冗談なんか言わねえよ、ドドブス」
教室の固まった空気を和らげるために朱里は玲奈に向かって笑顔を見せるも、他の火鍋メンバーは驚いた表情のままだ。
「な、なんでそんな急に......今まで転校なんて一言も言ってなかったじゃねえか」
美音が口を開く。なぜか涼花と手を繋いでいた
「ああ、ウチ自身転校を親から聞かされたのがまだ最近のことでさ、親が仕事でやらしかしちまって今住んでいる家から出て行かなきゃいけなくなったんだ」
数日前、両親から引越しの話を切り出される。理由を問いただしたものの『仕事で失敗してしまった』それだけで後は何も教えてくれなかった。子供に対して言いたくないこともあるのだろうと自分自身の中で無理矢理納得をしたがやはり仲間達と離れたくない。一人暮らしでもしようと思ったものの、あまり家が裕福ではないことを知っていた朱里は言い出さなかった。
両親は朱里を気遣って引越しを冬休み中に行うことを決めた。冬休みまでの残り一週間程となるが実感が全く沸いていない。なんだかんだで結局はこの日常が続くと思っているからだろうか。
「ふざけんな! ウオノメが居なくなったら火鍋はどうなるんだよ!」
「おい、やめろクソガキ! ウオノメが悪いわけじゃねえだろ」
涼花が朱里の肩を突き飛ばし、朱里は抵抗することなく後ろに倒れそうになった。玲奈が涼花を止めに入る。
「......ホントに、ごめんな」
荒れていた涼花は朱里の悲しげな表情に反撃する気力も生まれず、俯向く。しんみりとした重苦しい空気はチーム火鍋を沈黙させた。ずっと一緒だった。それが居なくなるなんて考えもしなかった。仲間が一人居なくなる経験が無かった彼女達は、何て声をかければいいか迷った。
「なぁ、送別会開こうぜ。カミソリとゾンビも呼んでさ」
声を発したのは奈月だ。朱里達は一斉に奈月を見つめた。
「ウオノメが転校しちまう現実は変えられねえんだ。だったらしんみりとしてないで笑顔でウオノメを送り出してやろうぜ!」
いつもは素っ頓狂な発言ばかりしていた奈月が珍しくまともなことを言った。意気揚々と言った割には周りの反応が薄く、奈月は焦って目をキョロキョロさせる。
「......そうだな、確かにケンポウの言う通りだ。ウチらは離れようと絆は変わらねえ」
玲奈が朱里達の目を一人一人見る。自分達チーム火鍋は結成当時からの助け合って時には競い合ってお互いを成長させてきた。一番の仲間達であり親友だ。離れ離れになってもその絆の糸は繋がったままできっと切れない。
お互いに目を合わせ、仲間を確認すると笑い合う。
「よし! そうと決まれば火鍋の具材買い出しに行こうぜ!」
「カタブツも呼ぼうぜ! あと先生も」
美音と涼花が真っ先に教室を飛び出した。その2人を追うように残った3人も教室を笑顔で出る。
朱里は目頭が熱くなり、涙が出そうになるのをぐっとこらえた