13
時刻からすれば一番日差しが強い時間帯である。ショッピングモールから出た祐樹は太陽を手で隠すような仕草をした。周りの女性達は日傘やサングラスで日焼けをしないようにしているが、杏奈は何も装着せず祐樹の前をどんどんと歩いている。日焼けを気にしないのか。それにしては肌が綺麗過ぎる。
「入山さんって、肌白いですよね」
「まぁ、焼けない様に日焼け止めクリームをいつも塗っているからな」
杏奈が持っていた小さなバッグには日焼け止めが常備されていた。その美貌を保つ為にはしっかりとした手入れが必要なのだろう。
最高気温が夏日を記録する中で、杏奈が外を歩きたい。と言ったのが祐樹はやはり意外に思えた。元々、ゆりあと遊びに行ったりする仲らしいが、美音のようにアウトドア派には見えなかった。杏奈には幼さというものが感じられない。だからこそたまに見せる笑顔が刺激的に感じれるのだが。
「木崎さんとはどんなことして遊んでるんですか?」
祐樹は杏奈の隣に並んで歩き、話しかける。杏奈は表情を変えず一点を見つめたままだ。
「マジックか……、マジックがゲームセンターでゲームをしているのを見たり、漫画を立ち読みしているのを見たり、だな」
違和感がある答えに祐樹は首を傾げる。
「入山さんは木崎さんを見ているだけなんですか?」
「ああ、そうだ。マジックがやっていることは私には全て興味の無いことだからな」
不思議な話だ。決して2人の気が合っているわけではない。自己主義同士なのに好意が生まれるのは何故だろう。
「いや、やっぱり意外です」
「おたべにも良く言われる。『お前達が仲良いのが不思議で仕方がないって』」
「多分、みんな思いますよ」
「そうだな。私自身も思う」
景色を見るというよりは前だけをただ見つめている杏奈。無言の時間も多くなる。それでも女性とデートのようなことをするのは祐樹にとって楽しい時間だった。自分には勿体なさ過ぎる。
美音や朱里を含めた火鍋のメンバーや南那と真子に比べて杏奈はかなり大人びていた。本当に同じ高校生なのだろうか。確かに学生時代、同じクラスにやけに幼い女子も居れば、大人びた女子も居た。美音や南那達も1つ2つ歳を取れば見違える様に大人びてくるのだろうか。
そういえば、火鍋の中でも玲奈は意外と良いスタイルだ。裸こそ見たこと無いが、杏奈のように足が長く、小顔で胸元もふっくらとしていた。ファッションモデルのような体型かもしれない。また違った肌の柔らかさがありそうだ。
「……もうそろそろだな」
生徒の淫らな姿を想像しニヤニヤしながら歩いていた祐樹は杏奈の声で歩みを止める。杏奈も同様に歩みを止め、空を見上げていた。太陽がギラギラと照りつけていた青い空はいつのまにか薄い灰色に染まっていた。