09
少し前に決めていた
東京に戻ってもいいと言ったときの親父の見たことのないような表情
ポーカーフェイスが僅かに崩れて嬉しそうだった
母さんのばあちゃんが倒れたと言ったときの心配そうな顔
もう俺の我儘で決断を遅らせるわけにはいかない
そう心にきめていた…
「え…なんで…?嫌だよそんなの……」
再び泣き出した珠理奈
いざ口にするとこうなるのはわかってたはずなのに…
「なんてね。嘘だよ」
その一言で元通りになったかもしれないけど、俺は信念を貫き通したかった
いつまでも優柔不断のままでいたくなかったから…
「嫌だよ…バカ……バカバカ!…諒くんのバカ…!」
肩を力なく叩き続ける珠理奈
「うっ……なんで…なんでよ……」
本当に辛かった
「ゴメン…」しか言えなかった
辺りはもう暗くなっていた
街灯の光に照らされた僕はどうすることもできなかった