06
「お待たせ」
もう木崎はそこにいた。相変わらず早いな…
「ホント、時間にルーズだよね」
少し呆れ顔で言われる。君が早いんだよ…たぶん
「話ってなに?」
木崎は制服姿だった。スカートがまくれて太ももが見えていた
つい、目に入ってしまう
「明音がね…」
不意に話しかけられたこととある人物の名前が出てきたことに驚きビクッとしてしまう
「あの時…どうしたらいいかわからなくて諒くんにあんな態度取ったんだって」
そうか、高柳さんもそれなりの理由があったんだな…
そんなことも知らず少し苛立っていた過去の俺を殴ってやりたい
ていうか、木崎はもうこの事知ってるんだ…
「許してあげてくれないかな…」
「もう、気にしてないよ。理由も聞けてスッキリした」
「なら、いいけど」
なんだ?意外とあっさりだな…
用がすんだなら今日は疲れているから帰りたい
そう思った俺は立ち上がった
「待って。本題はこれじゃないから」
木崎が真剣な眼差しを向けてくる
俺はどうも女の子に甘いみたいだ…
仕方なく座り直す
「諒くんは気づいていないだけ…」
小さな声で木崎が言った
「は?どういう意味だよ…」
「あなたは自分が思っている以上に思いを寄せられてる」
木崎は続ける
「明音もそうだけど…『中途半端な気持ちじゃ付き合えない』なんてのはそういう人達から見たら、理由になってないと思う」
なんだ…意味が分からない…
何を言ってるんだよこいつは…
木崎は言った
「一度、誰かと付き合った方がいい。諒くんのためにも、思いを寄せている子のためにも…」
いってる意味が分からないのに何故か心臓の鼓動が早くなる
「そういう風に遊び半分で付き合うのはよくないと思う…」
「それは分かってるよ…でも…」
「このままだといつか…いつか絶対苦しむよ…諒くんは…」
木崎の悲しそうな表情を見て俺はなにも言えなかった
「私はそうなってほしくないから…」
そう小さな声で呟き、俺に背を向けて歩き出した
全く状況が理解できない俺はひとりさびしく取り残された
「訳わかんねえよ…」
少し、泣きたい気持ちになった
もう時計は7時を指していた