06
「着いたよ」
車から降りると目の前に聳え立っていたのは大きな教会だった
そう、俺が今日名古屋に来たのはこの“教会”に来るためだった
「山本くん、こっちだよ」
暫く教会に見とれていた俺に声をかけてくる向田さん
「ごめん、すぐいくよ」
慌てて後を小走りで追いかけた
中に入るともうすでに沢山の人がいた
見慣れた顔も何人かいる
あれは鈴木京平だろうか
お茶らけていた面影はもうなく、顔つきも変わっていた
向こうで誰かと話している女性はおそらく松井玲奈さんだろう
透き通るような白い肌に引き締まった体のライン
真面目で暗い印象だった彼女は美しい女性となっていた
みんなそれぞれの道を歩み、いろんな事を経験してきたんだろう何て思うと少し嬉しく思えた
段々と人だかりと話し声が収まり次第にみんな席へ着いていった
「私たちも座ろうか」
僕たちも近くの空いていた席に座ることにした
「いよいよだね」
阿比留さんが興奮気味に口を開いた
「そうだね」
そう短く返す俺は何故か緊張して心臓の鼓動が大きくなっていた
「なに緊張してるの」
向田さんに心を読まれたかのように指摘され少し驚いた
「ちゃんと見てあげてよ」
その言葉はいろんな事を意味していた
「わかってるよ」
俺は大きく深呼吸をした
その時マイク音で始まりの合図を告げる放送音が鳴った