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「お待たせしました」
しばらくすると店員が料理を運んできてくれた
「うわぁ、美味しそう」
目の前に置かれたビーフを見て、歓喜の声を上げる木崎
見た目は綺麗な女性なのになんだか昔よりも子供っぽくなったような気がする
そんな事を思いながら僕も運ばれてきたサラダを一口食べた
カチャカチャとナイフとフォークが皿に当たる音が彼方此方で聞こえた
ふと振り返ると皆は楽しそうに笑いあいながら食事を楽しんでいた
「向こう行きたいの?」
俺の視線に気づいたのか木崎が声をかけてきた
「いいや、そんなことないよ」
「ふーん」
自分から聞いてきたくせに興味なさそうな返事をされた
少し立腹しながら勢い良くメインディッシュを頬張った
暫く経つとふと木崎が話し始めた
「珠理奈ちゃんさ…綺麗だったよね」
「あぁ、綺麗だったな」
少し満腹感を得られたのでフォークを置いた
「諒くんは悔しくないの?」
意外といえば意外だったがある程度予測していた質問だった
「それはないな。珠理奈も言っていただろ?珠理奈の幸せは俺の幸せでもあるし、雄大ならきっといい旦那さんになるさ」
向こうでお互いに笑い合う新郎新婦を横目に言った
木崎は少し相槌を打つだけでそれ以上は何も聞いてこなかった
「木崎は今彼氏とかいないの?」
今度はこちらが質問をしてみた
「いないよ」
短く答えられた
木崎はなんとなく人付き合いが苦手そうだしカップルとなったらもっとややこしくなりそうだ
「そういう諒くんはどうなの?」
「うーん、いないな」
そういえば俺も珠理奈と付き合ったのが恋愛関係になったのが最後だった
「いい人が見つからなくてね」
そう返すと木崎は向こうを指差し
「まなっちゃんは?今彼氏居ないらしいよ」
向田さんか…
そういえば転校した時に一目惚れしたのは彼女だったな
勿論、彼女はそれを知らないが。
この結婚式の段取りもしてくれたし、なにかとお世話になっている
「向田さんね…」
声に出してしまうほど真剣に考えていると
「なに真剣に考えてるの?バカみたい」
少しだけ彼女のナイフを動かす手が早くなった