第二十五話
12日になり、帰省の準備をすませて札幌駅に行こうと玄関へ。
するとスマホが鳴り確認すると、みなみからだった。
響『みなみどうしたの?』
み『みなみも14日から16日までお休み貰えたから実家に帰ろうと思って。』
響『本当?なら向こうでも会えるね。』
み『うん!たまにゆっくり響とデートしたいな〜。』
響『そうだね。じゃあ、15日は朝から予定空けておいて。』
み『わかった〜。楽しみにしてるね?』
響『僕も楽しみ。じゃあ帰ってくる時は気を付けてね。』
み『響も。夜また連絡するから。』
響『わかった、みなみも仕事頑張ってね。』
み『うん、じゃあまたね。』
響『うん。』
通話を切り、待っていた姉と部屋を出る。
すると再びスマホが鳴る。
響「ん?絵梨花から?」
奈「今日は随分忙しいわね。姉ちゃん先行ってるわよ。」
響「うん、ごめん姉ちゃん。」
姉を見送り、電話に出た。
響『おはよう絵梨花。何かあった?』
絵『おはよう響君。あのね、今日時間ある?』
響『実は今日から実家に帰省するんだけど。』
絵『そうなんだ。帰る前に時間取れないかな?ちょっと話したい事があって。』
響『まだ切符買ってないし、30分置きに列車は出てるからまあ大丈夫だけど。出来れば札幌駅周辺にして貰えるとありがたいかな。』
絵『じゃあ駅近くの◯◯ってカフェで待ち合わせしよう?』
響『ああ、あそこね。じゃあこれから家出るから10時でどう?』
絵『うん。じゃあまた後で。』
通話を切ると今度は先に出た姉に連絡を入れ、先に帰ってもらう事にした。
ただ、『今日は一緒に寝てもらうわよ。』と言う約束付きだったが。
時間前にカフェに到着し、案内された席に座ると間もなく絵梨花がやって来た。
絵「ごめんね。帰省するところだったのに。」
響「そんな気にしなくていいよ。そこまで遠い訳じゃないから。」
絵「飲み物頼んだ?」
響「いや、絵梨花は何飲む?」
絵「私、アイスティー。」
響「すいません。」
「はい。」
響「アイスティーとアイスコーヒー。」
「かしこまりました。」
注文した後、
響「今日はどうしたの?」
絵「うん。ちょっと…。」
絵梨花が中々口を開かないまま飲み物が運ばれて来る。
仕方ないので、コーヒーに口を付けたところで、
絵「私ね、響君の事が好きなの。」
響「ん!?」
突然の告白に思わずコーヒーを吹き出しそうになる。
響「ど、どうしたの突然?」
絵「響君にとっては突然かも知れないけど、私には必然だよ。あの時響君に道標を示してもらってから、私の生涯の伴侶は響君しかいない、そう思ったの。」
響「ちょっと話が急過ぎて追いつかないよ。」
絵「響君と出逢ったのは私にとって運命だったのよ。だから私と結婚を前提に付き合って下さい!」
そう言って頭を下げる絵梨花。
とんでもない話の展開に少し混乱したが、深呼吸して冷静になるよう努める。
そして口を開いた。
響「頭上げてよ絵梨花。」
絵「…うん。」
響「正直凄く驚いた。それに、まあ何て言うか絵梨花みたいに可愛くて多才で、ちょっと変わってるところもあるけど、そんな子に好きだって言われるのは嬉しい。」
絵「本当?」
響「もちろん。…だけどね、この間話した通り僕には彼女がいる。絵梨花がさっき『運命』って言ったけど僕にとってはみなみが運命の人だと思ってる。」
絵「………。」
響「だから、」
絵「待って。」
響「絵梨花?」
絵「その答えは今すぐ欲しい訳じゃないし、聞かない。今日は私の決意表明。これからもっともっと自分を磨いて響君が振り向いてくれるような女性になるわ。だから響君。」
響「何?」
絵「覚悟しておいてね。」
僕を指差しながらビシッと言い放った絵梨花。
その姿に僕は苦笑いを浮かべながら、
響「困ったな…。」
そう呟くしかなかった。
絵「あ〜言いたい事言ったらお腹空いちゃった〜。ねえ響君、パフェ食べてもいい?」
響「僕の奢り?」
絵「だって〜慌てて出て来たから、さっき財布の中確認したら300円しか入ってなかったんだもん。」
響「…さすが。わかったよ好きなの食べなよ。」
絵「やったー!やっぱり私の運命の人だわ。」
自由奔放、天真爛漫、彼女を表す言葉はまさにこれなんだろうと、メニュー表を眺める姿をボンヤリ見ながら考えていた。
絵「パフェだけじゃなくて、オムライスもいい?」
響「………どうぞ。」
絵梨花の食欲が凄まじいことを初めて知ることになった1日だった。