第二十話
その夜のみなみとのデートは、僕が過去最高に気を使い、機嫌を損ねないよう努めたので最後には満面の笑みで終わる事が出来た。
ただ、
み「響はみなみの彼氏なんだから、他の子に優しくしすぎない事。…そんなのばっかりあったら泣いちゃうからね、みなみ。」
と釘を刺された。
響「僕はみなみ一筋だから。心配要らないよ。」
み「響はそうでも周りの子がそうじゃないから言ってるんだからね。」
響「…気を付けます。」
その後、みなみを家まで送ると
み「本当はもっと一緒にいたいけど明日早番だから…。」
響「わかってる。明日も店に行くから、仕事頑張ってね。」
み「うん、ありがとう。…おやすみ響。」
そう言ってみなみは背伸びをして僕にキスをした。
響「おやすみ。」
みなみが家に入ったのを見届けてから家路につく。
家に着くと、玄関にはいつもとは違う靴がある。
そして、なんだか騒がしい声。
響「…嫌な予感。」
ドアを開けるとそこには、
美「あ〜響〜。久しぶりだね〜。昨日はどうして返事くれなかったのよ〜。お姉さん悲しい〜。」
と絡んでくる美彩姉ちゃん。
そして、
奈「今までどこほっつき歩いてたの?この寂しがり屋の姉を放って。」
と不満をあらわにする奈々未姉ちゃん。
さらに、
麻「ブラコンが過ぎるよななみは。ほらみさみさも響に絡まないの。」
東京でモデルの仕事をしている麻衣姉ちゃんまで。
響「麻衣姉ちゃん久しぶり。元気そうだね。」
麻「お陰様で。響は相変わらずモテモテだね。」
美「ねえ、なんでまいやんだけに挨拶してるのよ〜。みさは?」
奈「そうよ、姉にただいまのキスくらいしてもいいのよ?」
響「……2人とも酒臭い。」
リビングはお酒の缶が大量に転がっている。この状況で2人に近づくとロクなことがないのを感じたので、麻衣姉ちゃんと話をすることに。
麻「本当困ったわ。少しまとまった休み貰えたから帰ってきたらこれだもの。」
響「そうだったんだね。たまに麻衣姉ちゃんが表紙のやつコンビニとかで見るけど頑張ってるね。」
麻「ありがとう。でもまだまだよ。」
そんな話をしていると、背中に柔らかい感触と重みを感じ、首に腕を回される。
響「…どうしたの美彩姉ちゃん?」
美「…みさの事キライ?」
響「好きか嫌いで言うなら好きだけど?」
美「じゃあみさの事愛してる?」
響「いやいや、美彩姉ちゃん彼氏いたよね?その人はどうしたのさ。」
そう言うと、一段と僕に密着する美彩姉ちゃん。
美「あんな奴とっくに別れたわよ。身体ばっかり求めて少しも優しくないんだもの。」
響「そうなんだ。で、どうしたいのさ?」
美「…響に抱いてほしいの。」
響「そう……ってそれは出来ません。僕にはみなみがいるんだから。」
と言って巻きついている腕を外そうとすると、今度は正面に回り込んで抱きついてきた。
響「ちょっと美彩姉ちゃん?」
さらに体重を僕に預けてきたので、思わず後ろのソファに倒れこむ。
美「やっぱり響じゃないとダメなの。…ねぇいいでしょ?」
瞳をウルウルさせて上目遣いで僕を見る。
美彩姉ちゃんの色気にドキドキしてしまったが、
響「…絶対ダメ。もう終わりにして、離れて。」
美「イヤ。」
響「もう。ちょっと奈々未姉ちゃんと麻衣姉ちゃん助けて。」
そう言うと、2人が美彩姉ちゃんを引き剥がすため寄ってくる。
その瞬間、唇に柔らかい感触が。
美「…キスしちゃった…。」
奈「…何してるの響?」
麻「あーあ。」
響「不可抗力でしょ?それにして来たのは美彩姉ちゃんの方だし。」
ああだこうだと言いながらも、やっと引き剥がされた美彩姉ちゃん。膨れっ面をしているけど…。
一方、奈々未姉ちゃんはいかにも怒ってますの表情。
麻衣姉ちゃんはやれやれといった感じで苦笑いしていた。
さっき、みなみに言われたばかりでこれではみなみに申し訳ない、そう思った僕は心を鬼にしてハッキリという事にした。
僕は溜息をひとつついて、
響「美彩姉ちゃん、今度こんな事したら二度と会わないし、連絡もしない。…奈々未姉ちゃんも朝みたいな事するなら、次は本気で出て行くから。」
そう言って僕は部屋に入り鍵をかけた。
響「…風呂は明日の朝にしよう。」
ぐったり疲れ果てた身体をベッドに預け、そのまま深い眠りについた…。