第一章
第十九話
七瀬と約束を交わし通話を切ると、



「…へえ、七瀬と遊ぶんだ〜。」


と後ろから声をかけられ、驚いて振り向く。
そこには腕を組み、頬を膨らました飛鳥が。


響「飛鳥…。」
飛「あたし今日は暇だな〜。昨日のお詫びに遊んでくれるのかな〜?」


グイグイと僕との距離を詰めて、目の前でそう言う飛鳥。


響「飛鳥、ちょっと近いんですが…。」
飛「何ならキスしてもいいんだけど?」


目を閉じ、一段と顔を近づける飛鳥に今朝のことがフラッシュバックした僕。


慌てて肩に手を掛け、さりげなく距離を取る。そして、


響「分かった、近くの喫茶店に行こう。まだ朝ご飯食べてないからお腹空いてて。」
飛「…仕方ないな、付き合ってあげよう。さりげなく距離を取ったのは気に食わないけど。」
響「………。」


女の勘は鋭いと改めて思った。




その後、札幌駅周辺で夕方まで飛鳥と買い物をする事に。


…もちろん何かと買わされましたとも。


みなみのプレゼントも合わせて買っていると、


飛「ちぇっ何だよー。あたしといるのに他の女のプレゼント買うのかー。」
響「約束してるんだから仕方ないだろ?飛鳥にも買ったんだから文句言わない。」
飛「デリカシーがないぞ。もう少し気を使ったっていいじゃん。」
響「どちらかと言うと飛鳥たちの方が気を使うべきだと思うけど。」


そう言うと口を尖らせる飛鳥。


そんなタイミングであの子が現れた。


絵「あ、響君!」
響「絵梨花?」
飛「生ちゃん?」
絵「どうして昨日連絡くれなかったの〜?」
響「ゴメン、昨日は忙しかったんだよ。」
絵「ずっと返事待ってたのになぁ。あ、これから時間ある?ちょっと話したい事があるんだけど。」
飛「生ちゃんちょっと待ってよ。今はあたしとデート中だから。」
絵「いいじゃん、飛鳥の事だから今日はこの時間まで響君を振り回してたんでしょ?少しくらい私に譲ってくれてもバチ当たらないわよ。」


ご名答。女の子の勘は本当に鋭いな、そう思っていると、


飛「絶対ダメ。せっかく響と2人の時間が過ごせてるんだから譲れない。」
絵「飛鳥ばっかりズルいよ。ねえ響君、私に時間くれない?」
響「僕はどちらでも構わないけど…。」
飛「えー。今日1日大丈夫だって言ったじゃん。」
絵「ほら、響君は飛鳥だけの物じゃないんだから。という事でお借りしまーす。」
飛「あっ!?」


絵梨花に腕を取られ、グイグイと引っ張られる僕。離れ際、


響「飛鳥、誕生日の件また連絡するから。」
飛「…うん、分かった。」
絵「じゃあね。」



少し歩いて、2人でカフェに入る。
飲み物を注文して、絵梨花に話しかける。


響「絵梨花は意外と強引だな。」
絵「いいじゃん。それとも迷惑だったりする?」
響「そんな事はないけどさ。」
絵「ところでね、響君は教員採用試験に受かったらどこに行きたいの?札幌周辺?」
響「話が突然だね。そうだなぁ、出来れば地元の管内に入りたいかな。」
絵「地元ってどこ?」
響「◯◯。だから上川管内だね。」
絵「そうなの!?でもあそこの管内は旭川に入るの大変だって言うじゃない。」
響「いや、僕は母校か若しくは周辺の小さい学校に行けたらと思ってる。」
絵「ふ〜ん、上川ねぇ。じゃあ次、なぁちゃんとは付き合ってないんだよね?」
響「またまた突然の質問だね。まあ、うん。七瀬は大事な友達。」
絵「飛鳥とは?仲良いし飛鳥は響君の事好きみたいだし。」
響「付き合ってない。飛鳥は幼馴染み。妹みたいな感じって言うと飛鳥怒るけど。」
絵「そうなんだ〜。じゃあ付き合っている人はいないの?」
響「いや、いるよ。」
絵「いるの!?」


突然大きな声を出す絵梨花。
ちょうど飲み物を持ってきた店員さんが驚いた。


響「あ、ごめんなさい。絵梨花、声が大きい。」
絵「ごめんなさい…。響君彼女いたんだ。誰?大学にいる?でもなぁちゃんとか飛鳥、ななみん以外の女の子といるのは見たことないし…。」
響「そうだね、絵梨花は会ったことないよ。彼女はもう就職してるから。」
絵「写メ見せて。」
響「あ、うんいいけど。」


スマホを開きみなみの写メを見せる。


絵「…可愛い。名前は?」
響「みなみ。」
絵「どんな子?」
響「え?そうだなぁ、喜怒哀楽がはっきりしてて、でもふわっとした感じ。」
絵「……付き合ってどのくらい?」
響「7年。」
絵「そんなに…。それじゃあもう倦怠期じゃない?」
響「いや、そんな事は特に。」
絵「最近よくケンカしてない?」
響「ケンカはしないかな。お互いヤキモチ妬く事はあるけど。」
絵「……響君幸せ?みなみちゃんといて。」
響「そうだね。ちゃんと働いてお互いの夢が叶ったら結婚したいと僕は思ってる。」
絵「………。」



その後、絵梨花はカフェを出て帰るまで黙ったまま口を開く事はなかった。



ただ僕はその後のみなみとのデートが気になって、絵梨花の様子をさほど気に留めなかった。




■筆者メッセージ
また更新が空いてしまいました。
こんな感じですけど引き続き頑張ります。
それから感想を頂きありがとうございます。
僅かでも面白い、楽しみにしていると言って頂いてる方がいるのはとても嬉しく思います。

ではまた。
hinata ( 2016/09/28(水) 20:08 )