僕の日向に君がいた。 - 2.キレイになりたい
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『ねぇ…あれ…小坂菜緒ちゃんだよね?ほら…アイドルのさ?日向坂…だっけ?』

そんな言葉のする方に笑顔で優しく手を振ると、振られた女の子たちが一気に笑顔になる。
こうやって話すようになるまで、菜緒ちゃんがアイドルだということも全然知らなかった。

アイドルといえば恋愛禁止だろう。恋愛禁止のアイドルの横を男が歩いてるのはいかがなものか…。

そんな不安も鏡に映った自分の姿を思い出せば吹き飛んだ。

私は女。私は女。菜緒ちゃんのお友達。

菜緒ちゃんと並んで歩いていると、どこからともなく飛び出してきて、
『握手してください!』
というものもいた。握手を返してあげると同時に、
『握手会にもぜひ来てねぇ〜』
と付け加えて返す。

『あのぉ…小坂…菜緒ちゃんですよね…?お写真…お願いしてもいいですか?』

そんな言葉も沢山かけられていた。
声を掛けた子たちが写真を撮ってほしい相手は菜緒ちゃんで、自分ではない。
それは重々理解していたので菜緒ちゃんが写真をねだられると、僕は一歩横に引いた。

何人かに声を掛けられ写真を撮っていく中で、小学生くらいの女の子に話しかけられた。

『ねぇねぇ!なおちゃんと、おねーちゃんと、3人で、しゃしんとりたい!!』

女の子のお母さんは申し訳なさそうに頭を下げた。

『ほら…誰が見たって女の子やろ?完全に笑』

何かを企んだような目で菜緒ちゃんにそう言われた。

女の子を囲んで3人で写真を撮り、バイバイ!と手を振ると、再び道を進んだ。

自:菜緒ちゃんって…すっごい人気なんだね笑
菜:今日はいつも以上に声かけられるからびっくりするわぁ笑
自:またまた冗談言っちゃって笑普段からこんな感じでしょ?
菜:バレたかぁ笑…確かに最近声かけられること増えたなぁ…

人気者って大変だよなぁ…

菜:なぁ翔くん?今菜緒のこと大変そうとか思ったやろ?笑
自:図星過ぎて笑っちゃうわ笑…やっぱ大変なんでしょ?
菜:大変だけどな?笑顔をみんなに届けられるから幸せかなーって思うんよなぁ

年下の言葉にここまで感心させられた経験が無かったが、それほど心に響く一言だった。



菜緒ちゃんとはその日、化粧品の店を見て回った。

基準は、僕に似合いそうかどうか。どうやら、相当僕を作りこむ気でいるらしい。

モデルにメイクしてもらえるなんて、こんな機会中々ないんだろうなぁ…。



結局、口紅3種類とマスカラを買って買い物は終わった。

女装のことはみんなには内緒やで?と念を押され、別れる直前にメイク落としのやり方を聞き、多目的トイレの中で一人でメイクを落とした。
メイクを落とし終わって並び歩くとそれこそ不信なので、落とした後は別々の道を帰っていった。

アイドルと女装子の話かぁ…この先どうなるんだろうなぁ…複雑すぎる展開に、僕の頭では何も考えることが出来なかった。

はっぱ ( 2020/01/03(金) 01:14 )