1-4.炎の花が心を照らす。
『あのぉ…翔さん、今日も島案内してくれますか…?』
その一言で我にかえった。
もちろん、と答えたのはいいがさっき全速力で自転車を漕いだせいで汗が止まらなかった。
自:あ、ちょっとシャワーだけ浴びてきていいかな?
玖:分かりました!あ…それか…美玖が翔さんのお背中…流しましょうか?笑
その途端に様々な感情が頭を横切った。
自:みっ…美玖ちゃんっ…?大丈夫?
美玖ちゃんも自分で言ったことに相当驚いたらしく、顔を真っ赤にして手をパタパタさせていた。
玖:いっ…いや、結構…ほっ…本気なんですからねっ!?笑
…まさか本当に背中を流してもらうとは思わなかった。
変なことは何もしていない。美玖ちゃんも服を着てたしボクもタオルでカラダを隠していたし。
ということにしておかないと…ね。
都会の高校生ってずいぶん遊んでるんだなぁと感じた瞬間だった。
本当に軽くシャワーを浴びただけ。それ以上は何も起きていないし起こそうともしなかった。
風呂から出て服を着て、出かける準備をした。
ボクの住んでいた島はちっぽけで田舎町だったが、それでも織物でかなり有名だった。
織って作った浴衣は日本中…いや、世界中に輸出されているらしい。
美玖ちゃんもそんな噂を聞いたらしく、まずは浴衣の店に案内することにした。
…
〜カランコロン〜
店員:いらっしゃいませ〜あ!翔ちゃんいつもありがとねぇ〜あれ?彼女さん?笑
前日もこんなセリフを言われた記憶がある。
自:いやいや彼女なんて出来るわけないじゃないっすかぁ笑旅行に来た子の案内ですよ笑
前日と全く同じ受け答えをし、店の中に美玖ちゃんを案内した。
玖:うわぁ…すごいですね!こんなにいっぱい…
自:でしょでしょ!美玖ちゃんってお祭りとか行ったりすることあるの?都会だと…そういうのも少ないのかな?
玖:いえいえ!お祭り好きですよ笑毎年行ってます!
自:へぇ〜都会でもお祭りってやってるんだねぇ〜
なんて素朴な会話をしながら店の中を見ていくと、美玖ちゃんの目に青色の浴衣がとまった。
玖:これ…すっごい可愛い…試着ってできますか?
店員:もちろんです!ご案内しますね〜
…20分ほど経って美玖ちゃんが試着室から出てきた。
似合う…似合う…可愛い…可愛い…ものすごく可愛い…
とにもかくにも可愛いという以外の表現が思い浮かばなかった。
こんなにも浴衣が似合う少女がこの世にいたのだろうか。
玖:どっ…どうですか?似合いますか?笑
自:似合うよ…似合いすぎてやばいって…笑
玖:ほんとですか?翔さんに褒めて貰えて嬉しいです!
自:褒めるも何も全部ほんとのことだもん…ねぇ店員さん?
店員:そうですよぉ〜よくお似合いです!
玖:えぇそんな褒められたら恥ずかしいですよ笑
そういってはにかんだ姿を見て、次に言いたいことは一つに決まった。
自:美玖ちゃん、この浴衣欲しいでしょ笑
美玖ちゃんは目をキラキラさせて、『欲しいです!』と一言。
ちょっと値段の張る浴衣だったかが、そんなことはどうでもよかった。
今同じ状況になったらきっと…躊躇するだろうなぁ笑
即購入し、包んでもらった。
自:今日の夜は…浴衣着て花火でもしちゃう?笑
玖:えぇ〜!花火ですか?楽しそう!
…夜がとても待ち遠しかった。