1-1.古い公園のベンチの前。
あれは…何年前だったか。ボクがまだ離島の田舎町に住んでいたころ。
あの頃の楽しみといえば、船から降りてくる客の観光案内をすること。
と、いっても仕事ではなくボランティアで。
懐かしいなぁ…山の上の祠には恋愛の神様がいるんだっけ。
暇になるといっつもあの山に登って神頼み…してたなぁ。
まぁ、まさかあの時は神頼みが上手くいくとは思ってもいなかったんだけど。
……
今でも絶対に忘れない。8月5日。
あの日は夏休みってこともあって普段の2倍は船で観光客が来ていたっけか。
いつも通りその観光客を見てるとその中に、地図とにらめっこしながらあたりを見回す少女がいた。
…ボク、島の者やけど…どっか行きたいとこでも?
?:あ…島の方ですか?この島に…"恋愛の神様"がいるって聞いたもので…
…あぁ、あの神様か笑 山の上だけど…お姉さん登れる?
?:もちろんです!その覚悟で来ましたから!あと…山登りの後…美味しいお寿司屋さんもあるって聞いたので笑
…お姉さん、お寿司好きなんだ笑 じゃあ…案内するからついてきてね?
?:はい!ありがとうございます!
あの時の笑顔は永遠に忘れることはないだろう。
それからボクと彼女は…あ、そうだ。彼女は名前を美玖と言った。
ボクと美玖は恋愛の神様を目指して山に登った。
…そろそろ一回休憩する?
玖:お兄さん、疲れちゃったんですか?笑この島の方なんですよね?
…いやぁそうだけどさぁ笑…美玖ちゃん歩くの早くない?
玖:お兄さん…ゴリみたいですね笑
…え?どゆこと?
玖:ゴリって…漢字で書くと魚に休む(鮴)って書くんです笑
玖:すぐ休むから…そんな気がするなーって笑
…美玖ちゃん魚の知識すごいんだね…こりゃぁ将来立派な博士だ笑
玖:もぉ…恥ずかしいですよ笑あ、ちょうどベンチがありました笑休憩しましょ?
…そうだね。ちょっと一息つこっか笑
……
それからボクと美玖ちゃんの2人で山に登り、恋愛の神様にそれぞれお願いをした。
え?お前はお願いする意味ないだろって?ったく…夢くらい見たっていいだろ別に笑